野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

土俵巡り

さいたまトリエンナーレのための取材。本日は、JACSHA(日本相撲聞芸術作曲家協議会)による土俵巡り。午前中に、作曲家の鶴見さん、トリエンナーレスタッフの蟻川さんと、さいたま市内の小学校の校庭にある土俵で、写真撮影。結局、野村は上半身裸で、下半身はふんどしのみになり、鍵盤ハーモニカを持っての土俵入り。面白い写真がとれる。鶴見幸代は、呼出しさんのように掃除をする。

午後は、元力士で高砂部屋マネージャーの一ノ矢さんも加わり、笹久保の子ども古式土俵入りの取材。古式土俵入りの不思議な動きが、相撲の四つ身の型や防ぎの型と共通する動きだったりすることが判明。そして、古式土俵入り保存会の方々と、土俵で記念撮影。

続いて、さらに別の小学校の土俵で、撮影。ここから、作曲家の樅山さんも合流。一ノ矢さんと四つに組んで、力が入った感じがしないのに、いつの間にか上手投げにあい土をつけられる。プロは凄い。

最後は運動公園の土俵で、一ノ矢さんから、相撲基本体操を教わり、てっぽうも教わる。

8月26日@両国門天ホールでの2台ピアノコンサートのプログラムノートを書く。



PROGRAMME

PART? IMPROVISATION

1 即興演奏
solo improvisation

2 即興演奏
duo improvisation


PART? COMPOSITION

3 野村誠作曲 「たまごをもって家出する」(2000)
Makoto NOMURA “Away From Home With Eggs” (2000)

4 野村誠作曲 「日本センチュリー交響楽団のテーマ」(2015)
Makoto NOMURA “Theme for Japan Century Symphony Orchestra”(2015)

5 野村誠作曲 「おっぺけぺーの種を蒔け」(2014/2015)
Makoto NOMURA “Sow the Seeds of Oppekepe”(2014/2015)

6 野村誠作曲 「ナマムギ・ナマゴメ」(1997)
Makoto NOMURA “Namamughi Namaghome”(1997)


出演:野村誠 Makoto NOMURA(1−6)
新倉壮朗 Takeo NIIKURA(2)
岡野勇仁 Eugine OKANO(4−6)



PART? IMPROVISATION

1 即興演奏

今年の4月―8月にかけて、調律師の上野泰永さんと野村誠で、「ピアノの本音」というコンサートシリーズを3回にかけて行いました。そこで、発展途上の楽器であるピアノ、様々な矛盾を孕んだ楽器としてのピアノ、既に完成してしまったと思われているピアノという楽器に、可能性はないものかと問いかけてきました。本日は、門天で多くの人々に愛されてきたピアノを即興で演奏して、どのような音楽になるか、非常に楽しみです。



2 即興演奏
duo improvisation


新倉壮朗さんに会ったのは、2001年。当時、町田の小学校教諭だった池田邦太郎さんの創造的な音楽の授業を見学に行った時、放課後に中学生だったタケオくんが音楽室に現れて、突然、即興セッションが始まり、リズム感の良さに驚愕した。その後、タケオくんは、野村のコンサートやワークショップに度々姿を現すようになり、会うたびに音楽的な成長を重ねていった。「新倉壮朗の世界」というコンサートシリーズに、ゲストで出演した時、初めて彼とピアノで共演し、彼の無調の独特なピアノに刺激を受け、野村も楽しくピアノを演奏した。あれから月日を重ね、 山下洋輔さんとの共演も実現したタケオくんの本日のピアノは、どんな音楽になるのか。それに野村は、どう応じるのか、それが非常に楽しみな即興演奏なのです。


PART? COMPOSITION


3 野村誠作曲 「たまごをもって家出する」(2000)

2000年、日蘭交流400周年を記念して行われた向井山朋子さんのコンサート「Amsterdam X Tokyo」のために作曲し、同名のCDに収録された。向井山さんから、「野村さんって、子ども好きでしょ。娘がステージにあがって一緒に演奏できる曲ってできるかしら」とのお題があり、当初は、向井山さんの娘のキリコさん(2000年初演時5歳)が演奏に参加する曲として構想。オランダの向井山宅まで出かけ、キリコちゃんを取材し始めたのが1998年。当時は、絵本をピアノの前に置いて、自由な即興をするキリコちゃんであったが、4歳を過ぎると恥ずかしくなり、「私、絶対出ないから」と言い始めた。その頃(1999)、野村は老人ホームでの共同作曲プロジェクトを開始しており、そこでの経験を経て、15分の曲を、一人の人間の一生として作曲することを思いつく。


4 野村誠作曲 「日本センチュリー交響楽団のテーマ」(2015)

野村は、2014年に、日本センチュリー交響楽団のコミュニティプログラムディレクターに就任し、同年、就労支援NPOスマイルスタイルとセンチュリー響で、若者の就労支援音楽プロジェクト「The Work」を開始。オーケストラ楽団員と若者たちでのワークショップの成果発表を、大阪駅前路上パフォーマンスとして行うことになった。自宅に引きこもり、中には月に2度ほどしか外出しないという若者もいた。一方、オーケストラも、通常はコンサートホールの中とクラシック音楽の世界の中に引きこもっている。でも、もっと外の世界に出たい、という気持ちが潜んでいることを感じた。そして、若者もオーケストラも、新しい形での仕事の仕方を模索していた。そこで、大阪駅前を通りがかる人々に、とにかく「日本センチュリー交響楽団」という言葉を連呼して聞かせる曲を届けてみようと、オーケストラと若者たちへの応援歌として作曲したのが、この曲。昨年、門天ホールでの吉森信さんとのデュオコンサートのために、2台ピアノ版を書いた。



5 野村誠作曲 「おっぺけぺーの種を蒔け」(2014/2015)

アコーディオンアンサンブル「アコルデ」のために2014年に作曲したアコーディオン5重奏を、2015年、吉森信さんと野村誠のデュオコンサートのために編曲。作曲しているうちに、「おっぺけぺー」という主題が生まれてきて、「おっぺけぺーcall & response」、「展開するおっぺけぺー」、「増殖するおっぺけぺー」、「おっぺけぺーのホケット」、「しゅしゅぽぽ機関車おっぺけぺー」、「おっぺけぺー聖歌」、「おっぺけぺーバグパイプ行進曲」、「ポリフォニックおっぺけ音頭」、「おっぺけぺー子守唄」、「おっぺけハバネラ」、「おっぺけ黒田節」、「哀愁のおっぺけぺー」、「音域ジャンプおっぺけぺー」、「おっぺけぺー民謡」、「おっぺけぺークレズマー」、「エリーゼのためのおっぺけぺー」、「おっぺけぺーフィナーレ」。川上音二郎の「オッペケペー節」は、以下の歌詞。「権利幸福嫌いな人に 自由湯をば飲ませたい オッペケペー オッペケペッポー ペッポッポー 固い上下角とれて マンテルズボンに人力車 粋な束髪ボンネット 貴女に紳士の出で立ちで うわべの飾りはよいけれど 政治の思想が欠乏だ 天地の真理が分からない 心に自由の種を蒔け オッペケペ オッペケペッポー ペッポッポー」。少しずつ種を蒔いて、育てていきたい。



6 野村誠作曲 「ナマムギ・ナマゴメ」(1997)

向井山朋子さんと大井浩明さんのために作曲。世界初演は、1998年の1月に、オランダとベルギーで、向井山朋子さんと大井浩明さん。日本初演は同年1月に、浅草のアサヒビールのロビーで、高橋悠治さんと高橋アキさん。その後、向井山さんがフレデリック・ジェフスキさんと演奏して下さったり、ゲオルク・シェンクさんがデュッセルドルフ音楽大学の学生コンサートで取り上げて下さったり、岡野勇仁さんが何度も上演して下さったり、何度も再演されている曲だが、野村自身が上演したことはない。両国門天ホールから、今年の8月に2台ピアノで何かしないか、と打診された時点で、日程的に新曲を書く時間がないことは分かっていたので、挑戦してみることにした。もともとは、1990−1994に活動していたバンドpou-fouでやっていた曲「情欲のメタル」という7拍子の曲。ペンタトニックのメロディーが復調で平行移動して、転調していくのが、テーマ。ナマムギナマゴメナマタマゴのリズム。