野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

マルガサリ

ガムラングループ「マルガサリ」の稽古を見学に、大阪府豊能町のスタジオ「スペース天」へ。3月25日に、フェニックスホールで、三輪真弘の新曲、鈴木昭男の新曲、ラハルジョの新曲と3つもガムランの新曲を初演するのですが、この日はあいのてさんツアーで浜松でライブをしているので、見に行けないので、稽古を覗きに行きました。

昭男さんの曲が30分、これは、文章で何をするかが書かれていて、楽譜というより台本という感じです。先日、ユキミキマサキというバンドが、柏木陽さん書き下ろしの「即興演奏家のための台本」というのに基づいて即興演奏をしたらしいですが、そんな感じかもしれません。音楽の台本があったり、演劇の楽譜があってもいいな、と思います。昭男さんの曲の練習は見られませんでしたが、台本を見て想像しました。

三輪さんの曲は、例によって演算しながら演奏しているっぽい曲で、舞踊も演算しながら踊るようでした。その結果現れてくる音や動きが、確かにあり得たかもしれない芸能になっていくわけですが、演奏家舞踊家がそこにどれだけの味や匂いを吹き込むかで、全然違うものになるんだろうな、という感じです。現時点では、あり得たかもしれない芸能の保存会が練習しているような感じで、これを深めていくと、あり得たかもしれない芸能の秘儀を見ているような感じになるのでしょう。

ラハルジョさんの曲は、「地震」というタイトルで、震災をテーマにした曲で、30分くらいの大作で、後半はかなり演劇的な要素が強いらしく、今日は地震が起こるまでの演劇的でない前半20分くらいを練習していました。これは、以前いずみホールで初演したヨハネス・スボウォの「太陽」という曲とも共通するのですが、色んなセクションが羅列というか数珠繋ぎになっています。

それにしても、こんな大作を3曲も初演するマルガサリは、相変わらず欲張りです。これから一気に追い込んで、3月25日は素晴らしい演奏会になることでしょう。関西圏の皆さん、お薦めです。

昨年9月に全編通しての世界初演となった「桃太郎」(全3時間半)のDVDができていて(3枚組)、もらって帰りました。また、プレゼン用の10分版のDVDも作ったみたいです。マルガサリの桃太郎は、プロ、セミプロ、アマチュアの融合したガムラングループなので、比較的安い値段で公演が実現します。興味のある方は、是非、DVDを取り寄せて、公演の計画を立ててはいかがでしょう?

ちなみに、「桃太郎」は今年の夏にインドネシア公演を計画中です。

今日は、色んな作曲家の初めてガムラン曲の現場に遭遇して、自分が11年前に「踊れ!ベートーヴェン」の作曲の準備をしていた頃を思い出したりしました。ガムランのために新曲を作曲することが、全く白紙で、楽器の名前も分からなかったけど、でも、すごくやる気があって、色んなイメージが溢れていて、可能性をすごく感じていて、そのために悪戦苦闘していた頃のことです。あの気持ちを思い出すと、またガムランの音楽を作りたいな、という気分になってきました。

注文していた本が届いています。いずれも友人の書いた本です。
老人施設で、お年寄りと演劇をしている作業療法士の川口淳一さんの本、と紹介してみましたが、この本のタイトルには、一文字も演劇という言葉は入っていませんし、著者プロフィールにも一文字も演劇という文字が入っていませんでした。だから、この紹介の仕方は、本人の本意ではないのかもしれません。プロフィールには、「いつも自分が愉しむことが何より大切だと信じている。最近、また何か愉しいことを探している」と書かれています。

リハビリテーションの不思議―聴こえてくる、高齢者の〈こえ〉

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居候ライフ、代々木公園でホームレス生活をし、カフェを運営するなど、様々な共同制作を試みるアーティストの小川てつオくんの本
このようなやり方で300年の人生を生きていく―あたいのルンルン沖縄一人旅

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テントを背負って旅をして絵を描くいちむらみさこさんの本どれも実際に人が生きている現場でのお話を、体験した本人の言葉で書かれているので、読むのが楽しみです。