野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ワニバレエプロジェクトを振り返って

この1週間について。自分なりに整理しておきたいので、少し書きます。
とにかく、1週間、ずっと考えていたことは、子どもに恩返しをする、ということです。やつらは「ワニバレエ」の作詞・作曲に携わったメンバーで、やつらの存在がなければ決して「ワニバレエ」は存在していなかったわけです。そして、「あいのて」で1年間に渡って「ワニバレエ」を放送したので、本当にその感謝の気持ちを込めて、1週間を過ごしたかった。子どもたちが幸せであれば、それでいい。本当に、ただ、それだけの気持ちで、1週間を過ごしてきました。
いつもワークショップをする時って、子どもが楽しむことも重要だけど、ぼく自身の音楽の探求にもなるように、毎回テーマを持って臨みます。何か新しい表現のヒントを見つけようと、色々仕掛けていきます。でも、今回は、そんな気持ちは全然なかったのです。今回は、ただただ、子ども達に恩返しすればいいし、何も無理しないでいいし、とにかく、幸せだったらそれでいい、そんな気持ちでした。
いつもワークショップをする時って、ぼくは、音楽的に面白いものに対してのアンテナを張り巡らせていて、それを見つけて、すごい勢いで、そこに雪崩れ込んでいく。それに、子どもとか参加者も巻き込まれていくように、みんなが面白いことをし始める、という感じなのです。
でも、今回は、ぼくは音楽的な面白いものに、アンテナを全然張っていなかったと思います。ぼくのアンテナは、ただただ、みんな幸せにしてるかな、誰かけんかしないかな、つまんなさそうな子がいないかな、とか、そっちに向いていました。ぼくは、教室の前で潤さんと加奈ちゃんと3人でワークショップを始めても、しばらくすると、教室の後ろで机の下に潜り込んだり、どつき合っている子どもの方に行ったりしました。そして「おい、エロじじい」と言ってどつきあっていたので、それを曲に組み込んだりしていただけ。
そうやっていても、何かしら音楽は生まれていくのです。そして、ぼくは音楽家なので、結局、色んなところに音楽の種を見つけてしまいます。でも、今回ほど、音楽に無頓着に過ごしたことはありません。
そして、ぼくは、今回関わった子どもたちのことが、すごく好きだった。
とにかく、今回の1週間の自分の立ち位置は、非常に不思議な立ち位置でした。子どもたちには、時々「先生」って呼ばれたりしましたが、「先生」と呼ばれることに、少しは違和感を感じましたが、それも全然ありのような気分で過ごしました。一体、これは何なんだろう?
最終日に上演した作品にも、作品としてのこだわりも全然なかった。とにかく、子ども達もお客さんも、みんなが幸せでいられれば、それで良し、って感じです。
本当に心地よい1週間でした。