野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

風船と紙コップの収録

今日は、「あいのて」の収録でした。風邪で微熱があるので、まぁ、なんとか乗り切ろうと思っていました。で、今日は、森迫永依ちゃんのことを中心に、収録の模様をご報告します。

収録前、森迫永依ちゃんがあいのて楽屋に遊びに来てくれました。途中、尾引さん、片岡さんもいなくなって、エイちゃんと二人で、話もできました。「やっぱり視聴者の人は、あいのてさんの声が聞きたいんじゃないかなぁ」とエイちゃんが言ったり、「太鼓やってもいい」と楽器を叩いて遊んだり、そんな中で色々発見して、「これ、音妖怪のコーナーで使えるんじゃないかなぁ」と提案してくれたり。エイちゃんは、いろんなアイディアがあるし、そういうエイちゃんと過ごせる時間は貴重です。あいのてさんの衣装に着替える時も、エイちゃんは平気であいのて楽屋にいるので、まっいっか、という感じで、すっかり打ち解けて、嬉しいし、今日はいい感じで一日できる予感がしました。結局、エイちゃんのマネージャーさんが呼びに来るまで、エイちゃんはあいのてさん楽屋でくつろいで行きました。こんな時間が、番組の成功につながっていくような気がします。

収録は、すごく順調に、楽しく進んでいきました。今日は予定時刻よりも、ドンドンまいていきます。1テイク目でOKになるケースが非常に多かったです。多分、風船も紙コップも、演奏中の動きが大きくないので、カメラがとらえやすかったことが理由の一つだ、と思います。あと、今日のスタッフはすごくよかったのか、現場の雰囲気が抜群によかったです。

風船の回は、画期的です。番組の最初では、風船とピアノによるフリージャズ風の演奏が行われます。ここまでラディカルなフリーインプロが番組に登場したのは、初めてだと思います。そして、次のあいのてさん登場の直後は、風船でチューリップのメロディーをなんとかかんとか演奏します。こんな既成曲を演奏するのも始めてだと思います。つまり、かなり両極端に針の振り切れた回のような気がします。

そして、風船の最後の曲の収録のことです。カメラリハーサルを仮に収録してもらい、その音をチェックしてから本番にいく、というのが、あいのての慣例になっています。調整室に行くときに、あいのてさんだけじゃなくエイちゃんも着いてくるのも、最近の慣例になっています。今日も、エイちゃんが来ました。そして、曲のプレイバックを見ました。そして、プレイバックの終わる少し前に、エイちゃんはスタジオに帰って行きました。

どうして、エイちゃんがプレイバックを最後まで見なかったのかは、分かりませんが、自分達の演奏を最後まで見ずに戻ったということは、まだ改善点があるはずだ、と思いました。スタジオに戻ると、エイちゃんは、本番で使う予定ではない風船を持っていましたが、ぼくと目が合ったら、その風船を戻したような気がしました。あっ、そうだ。エイちゃんの風船の音色が違うほうがいいかも、と思いました。エイちゃんがさっき手にしていたサイズの風船を叩いてみました。そっちの方が響きが合う。そこの場面でエイちゃんが演奏するリズムはエイちゃんに決めてもらっていました。しかし、どの風船を演奏するかは、スタッフ側で決めていたかもしれません。エイちゃんが決めたリズムをエイちゃんが選んだ風船で演奏すれば、断然、音の説得力が増すはずです。

そこで、本番いきなり風船の種類を増やし、奏法を増やし、エイちゃんの負担が増えるバージョンでやることになりました。一度、提案しかけて、でも、やっぱり大変だからやめておく?と聞いたら、エイちゃんは不満げな表情をしました。エイちゃんはどうしたい?って聞きました。両方やる、って言いました。それは安全な橋ではありません。でも、そっちで行こうという気持ちが嬉しかったです。

ここまで、スケジュールがまきで来ていましたが、この風船の曲は何テイクも取り直しが続きました。エイちゃんが大変ですが、エイちゃんは失敗せずに、なぜか他の失敗が出ました。で、OKテイクでは、エイちゃんは、本当に頑張って演奏しています。笑顔で楽しそうに演奏しているのではなく、緊張した面持ちで、真剣に工夫しながら演奏しています。営業スマイルは一つもなし、自分の意思で、一生懸命に音を探している。それを、ぼくは素敵だと思いました。

最近エイちゃんは、ピアノのデタラメ即興をすることがあります。以前は既成曲しか弾きませんでした。楽器の演奏も、伸び伸びしてきた気がします。この半年ちょっとの間に、エイちゃんの音楽力が明らかに向上しているように思うのです。1年間の番組の最初と最後で、エイちゃんが別人のようだったら、この番組は成功だと考えていました。そして、どうやらそれは現実のものになりつつあるのです。

収録を終えて、この番組、来年度も続くんじゃないか、そんな気がしました。何の根拠もありませんが、これだけいい感じでやれるなら、来年度も番組が存続するような気がしたのです。で、番組が存続しようと、今年度で終わろうと、今あるネタは来年度に残しておかないで、今年度で出し切ってしまおうと決意しました。そして、万が一にも来年度「あいのて」が続く場合は、単に今の延長ではなく、全く新しい切り口から別の音楽番組をもう一つ作ってしまうくらいのつもりでやろう、と決意しました。

他の出演者の面々は、もちろん素晴らしい活躍でしたが、本日は、エイちゃんのことを中心に書きました。あしからず。