野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

久石譲とミニマル

久石譲さんの本と近藤譲さんの本を読みました。久石さんは、映画音楽で成功した作曲家で、本はすごく素直に書かれていて面白いです。本の中で「ミニマルミュージック」という言葉が何度も出てきます。必要以上に出てきます。例えば、以下のような文章があります。

僕がやっていたのは「ミニマル・ミュージック」といって、
いったん、ミニマル・ミュージックを追求する芸術家としての方向性を閉ざしたが、
もし僕がクラシックを勉強してこなかったら、あるいはミニマル・ミュージックに影響を受けていなかったら、
現代音楽の中に僕がかつてやっていたようなミニマル・ミュージックの流れも起きてくるのだが、
学んだクラシックの延長線上でミニマル・ミュージックをやっていたのだが、そこに矛盾を感じて
日本でミニマル・ミュージックのスタンスを取っていた僕もまた、映画音楽をつくっている。
ミニマル・ミュージックからエンターテイメントの音楽に切り替えた20代のころ、
かつて現代音楽、ミニマル・ミュージックをやっていた。
ジャンルにこだわらないといいながら、現代音楽をやめたこと自体が、ジャンルの枠にこだわっているのではないか。
映画音楽だけではなく、ミニマル・ミュージックの作家としての活動もきちんとやっておきたいと考えるようになった。
ポップスで養ったセンスと、ミニマル・ミュージックを融合させながら、

この本は、角川書店から出ている「感動をつくれますか?」という一般書で、読者のほとんどは、「ミニマル・ミュージック」という用語を知るはずがありません。しかも、「ミニマル・ミュージック」に関する説明が一切ありません。読者の中にごくわずか混じっているこの用語が分かる人たちに、何かアピールしているような気がしてなりません。もしそうなら、機会があれば、久石さんと対談などしてみてもいいかも、と思いました。