野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ガムラン楽舞劇「桃太郎」のリハーサル

相変わらず、眠り続ける日々で、今日もぐっすり休んで体調を回復中。

今日は、中川真さんが主宰するジャワ・ガムラングループ「マルガサリ」とのリハーサル。スペース天に行きます。このスペース天は、京都府大阪府の境と言えば、随分都会のように聞こえますが、標高400mの山の中。山道を延々行った山奥、使われていなかった寒天工場を改修して稽古場にしています。だから、京都市内とは気温が全く違う。スペース天の「天」は、寒天の「天」ですが、まさにココは「寒い天」なのです。

そこで、2001年から5年間かけてつくってきた「桃太郎」(全5場)の稽古です。完全版上演は、9月10日、碧水ホールで行われます。ストーリーは、日本の「桃太郎」をベースに、「桃太郎」と類似する「ラーマーヤナ」のストーリーと微妙にミックスしながら練り上げられたオリジナルで、音楽も舞踊もすべてオリジナルです。音楽監修が野村誠で、振付をジャワ舞踊家の佐久間新さんがやっています。そして、全体のコンセプトを提示しているのが、中川真さんです。

今日は第2場をやりました。ここは、桃太郎が成長していく農村の日常が描かれる場面で、その平和な農村に鬼がやって来て、田畑を荒らした上に、桃太郎が恋心を寄せる花子が連れ去られてしまう、というシーンです。

ここでは、中川真さんが長年調査してきた奈良に伝わる「お田植神事」という儀式や、同じく彼が調査を続けている十津川村の盆踊りなど、が盛り込まれています。今日は、「お田植神事」の部分をやりました。中川氏は数多くの「お田植神事」を調査していますが、その特徴をジャワ舞踊家である佐久間くんに伝え、それを佐久間くんが振付ていきます。日本とジャワが複雑に入り組んでいきます。

次回のリハーサルは、6月10日、12日。10日には、第1場、2場を通して、12日には、第3場に取りかかりたいと思います。ぼくにとっては、楽譜を使わずにガムランの作品を作っていく可能性を探る5年間の実験の集大成と言いきれるレベルまで持っていきたいな、そこまで頑張ろうと思っています。

ジャワの地震に関して、様々な情報がありました。佐久間君のジョグジャの家は半壊だとか、インドネシア国立芸術大学のジョグジャ校の伝統音楽科の建物は全壊で、たくさんのガムランは瓦礫の下である、とか、誰々は生存が確認できた、などの話がありました。衣食住の支援がもちろん必要ですが、それだけに限定されてしまうと、この地震をきっかけに多くの文化が途絶えてしまう可能性がある。文化的な支援をどうやっていくべきか、ということを、話していました。昨年の5月には、ぼくもジョグジャに行って、多くのジャワの芸術家とコラボレートしました。何か、力になれることでは、協力していきたい、と思います。