野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

パパとママ完成

午前中は、碧水ホールで菊地奈緒子さんのリハーサルに立ち会う。28日のコンサートで演奏される箏曲「りす」。この曲は2000年に作曲した曲で、初演はアメリカ(水谷隆子さん)だったし、録音では聴いたことがあるが、生演奏で聴くのは初めて。箏の糸の上で「りす」という文字を書く動作をすることから始まる曲で、色んな文字を書くリズムや指使いから、曲ができあがる。初めて音と演奏している姿を体験し、感激。調絃は演奏者の自由になっているから、出てくる音は演奏する人によって違う。「りす」のかわいい感じ、アメリカで初演されたことなどを考慮して、菊地さんが決めてくれた調絃から、独特なメロディー、フレーズが浮かび上がり、自然と演奏に引き込まれていった。曲全体の構造を少し説明して、流れが少し良くなるように説明して、もう一度演奏してもらったら、ますます良い演奏になった。明後日が楽しみ。

午後は、箏の新曲の作曲。それに向けて、昨日までやった部分を譜面にしたら、全部で10の場面がある。こうやって譜面に書いてみると、柏木くん、カナちゃん、片岡さんが市川さん、菊地さんと遊びながら出てきたアイディアを発展させたとは思えない、(変な言い方だけど)なんだか曲みたいだな、と思った。何でも譜面に書いてみると、解釈する余地が出てきたり、意味が出てきたりして、それをアレンジしているうちに、どんどんクリアになっていく。さて、その譜面をもとに、1曲として、菊地さんと市川さんに通して演奏してもらった。すると、思った以上にいい曲である。で、途中で気になった部分、もう少し作り込んだ方がいい部分を書き足して、最後の終わりを考えて完成。できちゃった〜〜。最後の終わりは、娘のレハちゃんをあやしているうちに、娘が寝てしまい、その後、夫婦はどうするのか?そこをインタビューした結果できた場面。これで完成。もう一度、通して聴いてみて、タイトルを「パパとママ」にして、完成!

片岡さんと「くつがえさー音頭」を練習。これはマリンバとピアノのための曲(今年の2月に岡崎香奈さんと片岡祐介さんで初演)だが、今回はマリンバがなく、地元の学校で借りた2台のシロフォンを組み合わせて使うので、余計に(無意味に)2台の楽器を行き来する演奏になる。石村真紀と即興演奏も練習。この即興は、コンサートの第2部がいいな、と今ごろになって、プログラム構成が微妙に変更になってきた。

1 くつがえさー音頭(2005) 片岡祐介シロフォン)、野村誠(ピアノ)
2 りす(2000) 菊地奈緒子(箏)
3 つみき(2003) 市川慎菊地奈緒子(17絃)
4 押亀のエテュード(1997) 市川慎(箏の右手)、菊地奈緒子(箏の左手)
休憩
5 石村真紀野村誠の即興演奏 (ピアノ)
6 パパとママ(2005) 菊地奈緒子市川慎(箏)
7 ワークショップによる新曲 ガムラン、箏、ほか

夜のワークショップでは、一気に曲の形に向かうために、まず、楽器を本番に近い配置に置く。場を作る。これまでは、散らかっている環境で、どんどん遊ぶ、どんどんアイディアを出す場所だったが、これからは、形にしていく場所、練習する場所が必要。で、場所をつくり、そこにホワイトボードを置き、これまで作った断片を書き上げていく。箏との共演の曲は、会議室の机を囲んで回りながら演奏し、その中にある特定の場所だけ歌うとか、ある特定の場所だけ踊る、口をパクパクする、などの設定を設けた。これが、なんとも味わい深い音楽、どこかの芸能のような音楽になった。そこに、なんちゃってゴスペルをつなげてみたが、これはゴスペルがアジアに伝わって違った芸能になったようなもの。片岡さんがマラカスでガンバン(木琴)を演奏しながら、アフリカっぽい演奏をするのに合わせて、お手玉をやってみた。そこから、キャスターつきボナンにつながった。キャスターで転がしながら演奏したら、すごくいい音がした。それに合わせて、なんとなく片岡さんに音を加えてもらったが、中途半端に入れても難しそうなので、開き直って思いっきりバックバンドを考えてみたら、見事にはまった。

明日は、いよいよ作品が完成して通し稽古になります。