野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

さるう

朝、起きて、教育音楽の原稿を大慌てで書いて送ってから碧水ホールへ。

いよいよ明日が本番。照明や音響の仕込みも始まる。

ガムランの曲を完成させるために、昨日やり残した3つの場面、「スイッチ」、「音になる」、「碧水ホールのうた」を練り上げる作業。「スイッチ」はヒュー・ナンキヴェルがよくやっているゲームだが、それを二群に分けてやることによって、即興の「しょうぎ作曲」になる。2つのパートだけだと、やや複雑さに欠けるので、そのどちらの群にも属さないジョーカーを一人作り、その人は自由に演奏することにした。これ以外に、ルールと無関係に動く子どももいるし、ルールに従う子どももいるので、全体的には適度な散らばり具合になるはずだ。菊地さんも、「スイッチは音楽的ですね。それに、どういう仕組みになっているのか、分からない。」と言ってくれた。「音になる」は、単に音になるだけでなく、「観客に届く音になる」をやってみた。客席にいるお客さんに向けて、音を届けるということを、カラダを使って表現する(実際、音を鳴らした後に、客席のお客さんのところまで寄って行ったり)。そうすると、鳴っている音自体が、お客さんに届くようになる。随分よくなって、音が本当に飛び出してきた。碧水ホールの歌は、プリミティブな原曲が徐々に西洋化されて消費されていく展開になった。たくみは、昨日休んでいたのだが、サルがやりたいらしいので、サルも入れることにした。

そして、構成が決定して通し稽古。20分を超える曲になっていた。
1 アジアのゴスペル
2 音になる
3 スイッチ
4 転がるボナン
5 お手玉とボナンと木琴
6 碧水ホールの歌
7 会議机の音楽

幸弘さん曰く、昨年の『だいんだいん』より、クリアに明確になっているから、観客もより楽しめるのではないか。その後、みんなで相談して、タイトルは「さるう」になった。「さる」という言葉に「う」を付け足した言葉だ。フランス語のsalutにも発音が似ているし、「去る」という言葉も連想させるし、「さわらないでください」と書くはずの紙に間違えて「さらないでください」と書いてあったことも思い出された。しかも、後で気づいたのだが、「うるさ」を反対から読むと「さるう」になる。うるさくない音楽だ。

映像の上映のチェック。田んぼの畦道で起こる数々の出来事が大画面で気持ちいい。

「りす」、「つみき」、「押亀のエテュード」、「パパとママ」と4曲連続リハーサルを聴いた。写真撮影スタッフの服部さん他、みんな初めて箏の曲を聴いて、かなり感激してくれた。こんなに豊かな味わいがあり、しかもグルーブ感たっぷりの演奏ができる菊地さん、市川さんは素晴らしい。

調律の上野泰永さんが来て、ピアノを調律。全く違う楽器のようにピアノが響く。一番ピアノが鳴る場所を見つけてくれた。感謝。

ホテルで終演後のポップコーンパーティーについて、柏木くんと打ち合わせ。色んなお客さんと話ができるようにして、最後まで残ったお客さんとは、その場で箏の曲を作ってみよっか、という話になった。

いよいよ明日が本番。たくさんのお客さんが来ますように。