野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ワークショップとフェスティバル

今日は、碧水ホールでのワークショップ2:00〜5:00と、その後、若尾裕さんのやってるフェスティバルに顔を出して飛び入り演奏した。そして、色んな意味で懐かしかった。

碧水ホールのワークショップ。このワークショップを経て作る曲は、8月28日のコンサートで発表する。昨年の「だいんだいん」よりも何歩も進んだ作品が作れそうだ。とにかく、今日のワークショップは、今まで自分が体験したワークショップの中でも、圧倒的に自然発生的だった。こういう場から、次々に生まれてきた遊びのようなもの、音楽なのか音楽じゃないのか分からないようなもの、を紡いでいって発表したい。それをつまらなくまとめずに、生きた作品、作品じゃないような作品にするのが、ぼくの仕事。これは面白いし、やりがいがあるし、相当大変だけど、「つまんなくまとめない」信念さえあれば、道は見つかると思っている。
昨年とほぼ似たメンバーで、顔なじみ。懐かしい気分。子どもが1歳ずつ年とっているので、4歳は5歳、5歳は6歳、6歳は7歳。みんな、ちょっとずつ大型化してた。今日は会場が会議室で、会議室のゴージャスな椅子と机があったので、会議室の机の上に楽器をのせて会議室風に演奏。円形に囲まれた中の空間にもゴングを運んで来て、周りから演奏できるように置いてみた。会議室の机と椅子を本番に会場に持っていってもいいかもしれない。
最初は、大人だけが楽器を熱心に演奏していたが、気がついたら、子どもたちも演奏してた。もっちゃんが野球帽をかぶって野球のバットのように楽器を鳴らした。そこで、みんなで野球のバッティングのようにガムランの楽器を演奏してみる。ども鍵盤を叩こうと意識することなく、思いっきり演奏する音がいいな。
いつの間にか、こはるちゃん達が部屋の片隅に仏壇を作っていた。クノンを1個、これが仏壇のチーンという音らしく、しかも顔写真(鉛筆での味わい深い落書き)も飾ってある。昨年はキュウボウ車(救急車と消防車を合体させたもの)を作って、「だいんだいん」という作品を作った。子どもの言った言葉だが、「だいん」はじつはdying=死だと気づいた。そしたら、今年は仏壇。子どもが無意識に持ち出すテーマに、「死」が関わっている。今年はどうなっていくのだろう?
気がついたら、同時多発状態。こちらでは、バチを使ってマッサージ。ラジオ体操式に、前にある楽器を叩いた後に、後ろにそって背中をトントンというのも生まれた。もっちゃんは、おなかをマッサージされて気持ちよさそう。そんなときに、ヤマモトさんは黙々と楽器を演奏し、テトテトというフレーズを作っていた。たくみは、会議室の椅子をくるくる。
楽器を運ぶためのキャスターをスケボーのように活用して、その上に楽器を乗せて、床を素早く転がす。それをバッター役の人がバチで叩いたり。次々に色んな遊びが生まれていく。
そんな中、市居さんがガンバン(木琴)で叩いていた呑気なフレーズをみんなで真似してやったら、随分盛り上がった。それに合わせて、たくみが鍵ハモを吹くのだが、これが最高。ぼくも鍵ハモで合わせて、そのついでに色んなおもちゃ楽器が現れたら、子ども達群がる。メロディーホースで、ゾウになったら縄跳びしたり。
シェイカーでお手玉が始まったが、お手玉のようにしているシェイカーの音がカッコイイこと。一斉にシェイカお手玉やったら、かなりカッコイイリズムになるかも。
もっちゃんは5歳なのに、トランペット吹きまくり。たくみも6歳で、トランペットいい音してた。
とにかく、色んな遊びが生まれたし、ガムランの演奏法をみんな知らないので、自分なりに発明していたし、いい音がしていたし、居心地が良かったから、自然に遊んだり演奏したり、やらなかったりできた。雰囲気よし。
終わった後、ブルーシートを敷いて、すいか割りをした。コンサート当日にすいか割りをするかどうか?色んな可能性が広がっている。明日以降が楽しみ。本番は、このメンバーに、音楽家としては、片岡祐介さん、市川慎さん、菊地奈緒子さん、石村真紀さんが加わり、俳優の柏木陽さんも加わる。今の状況が、もっと豊かに広がるだろう。

それから、近江八幡へ。若尾裕さん、若尾久美さんのクリエイティブミュージックフェスティバルに顔を出した。ちょうど、ワークショップの帰り道。ちょっと寄り道。このフェスティバルには、99年に講師として参加したが、2泊3日の合宿なのにスケジュールが合わず、1日だけ参加した。それ以来だから、懐かしい気分。
到着するとジェフスキーの「パニュルジュの羊」が聞こえてきたので、入るなりぼくも演奏に加わった。この曲、89年にケージが京都賞を受賞して京都に来た時、それにちなんで勝手に京大西部講堂で催した「ケージバン」というコンサートで演奏したなぁ。これまた、懐かしい。
それから、色んな組み合わせの即興があった。酒蔵を改造したライブハウスだが、空間の響きがよく(残響が適度にある)、色んな音が美しく混ざり合う。だから、その響きを感じている即興は、心地よく響いたし、空間を感じてない即興になると、急に平面的になる感じがした。でも、概して美しい。
それで、ピアノとコントラバスとサックスのトリオがやってる時、林加奈ちゃんが偶然おもちゃのアヒルをチューと鳴らしてしまったので、そのまま背中を押したら、ステージに出て行って、熱唱したりパフォーマンスしたりして、騒いでた。他の人に比べると、加奈ちゃんは存在感が太い。太い分、時々、「やらない」ともっと良くなると思った。
でも、加奈ちゃんの存在により、緊張感がほぐれ崩れ、違った次元に行ったので、次のブルース風の即興の緊張感が危ない時、このワークショップの講師のコントラバスのおばちゃん(名前が分かりません)が、突然、客席の中で熱唱し始めた。ここで緊張感を取り戻したいという気持ちと即座の判断で、隠れたファインプレイ。一見、衝動的に歌ったように見えて、実は考えてる感じがした。
その後、これまた89年に共同作曲した(懐かしい)ゲーム的な曲「はないちもんめ」を紹介して実演した。この曲は、コンサートピースとして考えられたもので、コンサートで成功する曲だと思うが、音でコミュニケートすることが根幹にあるから、即興演奏の教材としても優れていると思った。
その後、若尾久美さん(ヴァイオリン)と低音のリコーダーの山田さんのデュオが始まろうとしたので、ぼくもピアノで混ぜてもらった。二人が持続音の出る楽器で繊細な音で即興をするので、それに合わせて音楽を作っていくのは楽しかった。ぼくは途中、声とピアノで応じた。ピアノが持続音がないので、声が間をつないでくれた。最後は、リコーダーの先端にぼくの口をつけての声とリコーダーの掛け合い。そうやって、終わっていった。
なんだか気持ちいい場だった。
93年ごろ、ギャラリーそわかでよく会っていた彫刻家の大倉ジローさんとも10年以上ぶりに再会。懐かしい。