野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

インプロミュージックスクール

はえずこホールでのワークショップ。さて、昨日のワークショップを終えて、一気に考えがかたまった。このグループの人たちと大慌てで作品作って舞台にあげるのではなく、時間をかけて、色んな体験をして、その上で一年後には、なんだか分からないけどスゴイ力をつけて、舞台に立ってもらおう。

そう考えると、継続的に、インプロ教室みたいな感じで、連続講座で単発参加も可というようなことをやろう、と思いついた。そこで、片岡祐介さんに連絡をとり、スケジュールを押さえて、

1月24日 片岡さんワークショップ
前半:ギターから発展させて作曲・即興
後半:二胡に合わせて即興演奏

1月25日 片岡さんワークショップ
前半:色んな音を探求する
後半:ピアノで遊ぼう

1月31日 ワークショップの参加者で、和太鼓奏者の小山敬史さんにお願いし
前半:和太鼓のリズムを教わる
後半:パーカッションの即興

2月10日 片岡さんワークショップ
しょうぎ作曲

2月11日 片岡さんワークショップ
前半:声を使った音楽いろいろ
後半:歌を作ってみる

というワークショップを、追加した。これで、2月21日に再び、ぼくが戻って来るまでも、このグループの人たちは、色んな音楽体験をしていくことになるだろう。

そして、4月以降も、このインプロ教室を継続することにした。月に2回程度、野村誠または、野村誠が選んだユニークなミュージシャンによる講座を秋くらいまで続けていく。とにかく、ぼくは人を育てよう、と考えた。野村誠のインプロミュージックスクールみたいなのを、ここで1年に渡って続けようと考えた。昨日、初めて会った人たちが、そういった1年を経過したら、1年後には別人のようになっているかもしれない。普通の音楽教室では教えないような野村誠の方法を体験する音楽教室をやろうと考えた。すっかり、やる気。

そうなると、3月11,12日のプレ公演での音楽班の舞台は、4月からの音楽教室コマーシャル、または来年の本公演の予告編になる。テレビだったら、コマーシャルが入るし、映画だったら予告編がある。でもステージでは、普通それはない。それをライブでやってしまおうと思うのだ。これをパロディーとか内輪受けにならないように成立させるのが、ぼくの仕事。

というわけで、ワークショップでは、こういったことを説明。すると、今日来られないはずのKさんが、現われて、ぼく宛の手紙と譜面を手渡してから帰って行った。なんと、昨日ぼくに新しく歌を作ればいいではないですか、と言われ、さっそく歌を作ってきたという。その曲はボサノバっぽい曲だったので、このピアノ伴奏をしながら、全員ピアノに合わせて、楽器でデタラメ演奏してもらった。2日目にして、デタラメ演奏の腕がみんな上っている。自分の演奏に自信が少しずつ増えていけば、それだけデタラメがデタラメでなくなる。

続いて、歌を練習し、歌とデタラメ間奏を交互にやった。その後、この譜面にサンバと書いてあったので、リズムをサンバ風にして、ちょっと決めを入れてみたり、パーカッションだけになる部分を作ったり、ソロ回しをしたり、そういうバンドのクリシェを色々説明した。すっかり、教室になってるなぁ。そんな感じで、サンバ成功。

続いて、高校生のOさんの持ってきたキーボードのプリセット音色を色々聴いて楽しむ。では、この音色を声で真似してみましょう、と変な音色を声で真似する。これをやっているうちに、「ホエールトーン・オペラ」の「どうやって実がなるの」という合唱曲を思い出す。この曲は、全員が一音、一音を自由なピッチで息が続く限りのロングトーンで伸ばす。そうすると、最初はトーンクラスターだったのが、いつの間にか和音っぽく移っていく。これを、またロビーで動き回りながら演奏。

他に、こういう簡単な楽譜でどんなやり方ができるかを説明。ぼくは、長い音符と短い音符だけを決めた簡易楽譜をホワイトボードに書き、これを全員ピッチ自由で演奏。こうすると、毎回和音が変わる。このルールを基点にいろいろ変化形をやってみた。最年長の男性Hさんが、「なんだか、こういうやり方だと神秘的な響きになるのかね」と質問してきたので、これは、各自がピッチを自由にしているので、無調になるから、使う音を限定してやるバージョンを試みた。キーボードで、低音のソをドローンとして鳴らし続け、ソラシレの4音だけを使って同じルールで演奏。すると、
「今度は、生命の時間の流れ、という感じがした」
とのこと。この曲は、「生命の時間の流れ」という曲になった。えずこインプロミュージックスクールの正式名称を考えなくっちゃ。とにかく、仙台から南へ数十kmの大河原町で、とんでもないことが始まりつつあります!ここが、日本のコミュニティ・ミュージックの中心になっちゃう可能性がでてきました!


追 それから、この夜のワークショップには、ピアノのデタラメ演奏の天才さんがいます。ものすごくピアノを弾くのが好きで好きでしょうがないっていう人で、ピアノを思いっきり弾きたい人で、すごく楽しくピアノを演奏しますが、全くの我流で、独特な味わいがあります。そのことを書き忘れていたな、と思い、追記しました。