野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

氷が固まる

中学生との作曲ワークショップ。鈴木潤さん、林加奈ちゃんと30人の中学生。ワークショップ開始直前に、主催者から「昨年はワークショップの最初に子どもが固かったから、解すためのゲームをします」と告げられ、ぼくが凍り付く。そもそも、ぼくは、アイスブレークと言われるような緊張を解すためのゲームが嫌いで、せっかく緊張しているのだから、その緊張感で音を聴いたり、音を出したりするところから開始するのをよし、としているし、そのことは、色んなところでこれまで何度も語ってきた。
中学生と対面。まず、講師のぼくらを紹介してもらえると思ったら、館の副館長さんが中学生に挨拶。この副館長さん、講師のぼくらに、一言もお願いしますの挨拶もなく、ただ中学生にだけ挨拶して去って行った。失礼だなぁ、と呆れる。その後も、副館長さんやスタッフの挨拶はあるのに、ぼくらの挨拶がないまま、ゲームに突入。ぼくらは、その間黙って見学。全く理解できない。しかも、そのゲームも、念入りに準備されているようには見えないもので、アイスブレークどころか、アイスフリーズ。雰囲気が固まってしまった。せっかくの心地いい緊張感が、気まずい雰囲気になって、20分と言ってたのが長時間経って、そこでぼくにバトンタッチ。まじ、困った。
この雰囲気では、用意してきた最初の導入のプランは全く成立しそうにない。映像を見せようか、曲を聞かせようか、と色々考えて準備してきた出会いの可能性は全てできなくなって、仕方なくそのまま楽器で音を出す活動に移行した。自己紹介も挨拶もなし。非常に不自然な出会いになって、相当やりにくい始まりになった。あ〜あ、今日は最悪だ、とかなり不機嫌。こんなやりにくい状況も珍しい。とにかく、気持ちが冷めてしまった。主催者側に悪気はないのだろうが、これは困る。先に困ると言えば良かったのだけど、あまりに突然の行動に驚いているうちに、この状況になってしまった。
子どもたちはエレキギターや、トランペットなどなど、色んな楽器を持参、かなり音楽やる気満々だっただけに、このスタートは不本意。で、「ぼくら何にも共有してないから、何作っていいか分からないから、何か言葉でも何でもいいから欲しい」とぼくが質問をしたら、「暗い和音」、「火曜サスペンスみたいな音楽」、「かなり楽しいロック」、「壮大」、「ジャズ風」、「お経」、「低い音」、「ずっこけた曲」など、色んな意見が出て、これを総括した郵政民営化についての曲を作ることになった。「N議員自殺」、「地獄や天国」など、死をイメージするアイディアが曲に盛り込まれてきた。中学生は暗い話が好きなようだ。確かに、ぼくも中学生の頃、毎日のように推理小説を読んでいたから、「〜〜殺人事件」のような話は毎日の日常だった。ぼくも年をとって大人になった分、自分の友人、知人の死の痛みを何度も体験しているため、死は痛すぎて、推理小説なんて読む気がしないなぁ。

深夜は子どもたちの部屋に深夜に訪問。男子・女子入り乱れての枕投げなど、かなり盛り上がるし、色んな話も聞けて、面白かった。