野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

中学生と雑曲

世田谷美術館の企画で、中学校に行って、雑音楽について一緒に考えた。
一つ目のクラスは、2年生。授業時間が52分ということに驚いた。世田谷区は全部そうなったらしい。2分ずつ増やせば、一日12分増え、×5日で、週に1時間余分に勉強したという計算なのだろう。外部から見ている者の感想として、ここ2・3年の日本の学校は、どんどん息苦しくなる要因を作っているように思う。
さて、2年生。ぼくの鍵ハモ演奏にもかなり喜んでくれたし、野村幸弘さんとの映像「ドゥスン・ゲダレンの畦道」も楽しんでくれたようだ(ちなみに、この映像は明日、明後日と世田谷美術館のエントランスで常時上映することになったので、ご覧下さい)。教頭先生の報告では、映像の中、足で水をばしゃばしゃしている場面に合わせて足を動かしている生徒もいたとのこと。その後、雑音楽について考えてもらった。全員が勝手に別の曲を演奏したら雑音楽、作曲しないで演奏したら雑曲、相性の悪い音を混ぜる、テレビの映らない音、リズムが合わない、などなど。そこで、これらのアイディアを合わせて、無理矢理演奏してみた。テレビをつけてザーっというホワイトノイズに合わせて、ぼくが鍵ハモでチューリップを弾き、そこで中学生が雑談したり雑音を出す。このあたりで52分経過でチャイムが鳴った。

給食に向かわずに残った中学生から「左手でも弾ける?」との質問。そこで、右手で弾いて、持ち替えて、左手で弾いて、という一人デュオをやってみた。なんだか、面白かった。野球部の男の子と話しているうちに、かねてからやってみたいアイディア「作曲家の野球大会」を語った。要するに、作曲家を集めて、野球をする。演奏家を集めて応援団を結成。バッターごとに(作曲家ごとに)、その作曲家の曲を演奏して応援する。そんなのを球場を借りてやってみたい。いつ、どこで?そのうちやろう。

午後は1年生。52分では時間切れの感じがあったので、自己紹介を手短にやった。1分ジャストで鍵ハモ・即興は、途中にサザエさんを挿入、フリーな即興も、メロディアスなところも、暴れるところも、いろいろ入れてみた。で、ビデオも見せて、残り30分で雑曲を話すことになった。ところで、ここで、なんとなく、中学生の緊張感というか、こそこそ、ひそひそ、じろじろ、といった感じが妙に音楽的、まるでジョン・ケージみたいな雰囲気があったので、ぼくは黙って味わってしまった。この静寂の間がしばらく続き、この変な間に堪えられなくなった中学生が、「いつから鍵盤ハーモニカをやっているんですか?」などの質問を開始、そのまま雑談に移っていった。雑曲には、やっぱり雑談だ。いきなり本題に入っては違う。そうやって雑談しているうちに、鍵ハモを30台ほど持っていること、ピアニストは浮気者だ、などなど、質問に答えているうちに色んな話が出る。そして、そうしているうちに、シャープぺんをカチカチする男子生徒の音がとてもいい感じに聴こえた。ぼくはそれを指摘した。別の子どもがボールペンをカチカチ、もっと面白いリズムをやった。それから、せきをする人がいた。演奏会ではせきは禁物だが、せきをする音楽があってもいい。そこから脱線して、以前、向井山朋子さんと伊藤キムさんとやった「Dozen」というパフォーマンスのこと、演奏者が譜面を落とす曲、それから客席で「シッ!」というのを意識的に取り入れた曲の話をした。世田谷美術館の塚田さんが、「しずかに!」って言ってる人が一番うるさかったりするんだよね、と言った。あとで、先生に聞いたら、このクラスには「静かに!」と授業中に私語を制する生徒がいるのだそうだ。それは、びっくりな偶然というか必然。

イギリスのハダスフィールドの国際現代音楽祭で、日本の中学生とイギリスの中学生のコラボ作品を発表することになっている。この中学校とコラボできるといいな、と少し相談を持ちかけた。

夜は、横浜みなとみらいホールの宗方さんと打ち合わせ。「オルガンスープ」の簡易印刷の製本された楽譜とCDを受け取る。これをワークショップ参加者に渡したり、興味を持ってくれそうなオルガニストに渡して広めていくことになる。
今日の打ち合わせは、弦楽四重奏を作るワークショップに関して。3月22日にコンサート。
1 ベートーヴェンか何か
2 オルガンスープより抜粋で弦楽四重奏アレンジ
3 1を素材にしてワークショップにより出てきた素材による新曲
というようなプランになった。ワークショップは11月ごろに開催予定。