野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

まじめな人

朝、起きると、林加奈ちゃんの熱は下がり平熱に回復していた。一晩で治してしまった。さすが、健康オタク。

今日から碧水ホールで連日ワークショップ。その前に、まず、石村真紀さんとのピアノデュオ即興。久しぶりで最初は勘が鈍っていたが、演奏を続けるうちに解れてくる。途中、見学者ありになったら、ますます真紀ちゃんの演奏が伸びやかになった。ピアノの技術がありながら、ほとんど遊んでいる子どものようにノビノビ。いいリハーサルになった。真紀ちゃんは今日は帰るけど、26日からこちらに滞在。ワークショップにも参加したり他のミュージシャンとセッションしたり色んな交流をしていくので、本番にはますますはじけた演奏をしてくれることでしょう。

紅茶の砂糖をかき混ぜるためのプラスチックのスプーンがいい音がした。これで楽器を演奏したりして遊ぶ。遊びが自然発生する場。その感じがすごくいい。

今日は片岡祐介さんのワークショップだった。なんちゃってゴスペル、なんちゃって校歌など、色んななんちゃって演奏をしてもらった後、館長からリクエストがあった「片岡さんに真面目な演奏をして欲しい」をお願いした。片岡さんはいつも真面目に演奏している人だが、近年コミカルな動きを伴う演奏が多かったり、表現力が豊かであるため極端な「なんちゃって」感が出たりして、「真面目な演奏」とは、そういう要素を排除した演奏、という意味の音楽を意味したと思うが、真面目な片岡さんは、このリクエストを真面目に捉え、本当に真面目に考えに考えて来たらしい。そして、片岡さんの『真面目』演奏が始まった。いつもは、観客の空気を拾って、その雰囲気に合わせていく片岡さんの演奏が、今日は自分の内面に向かって音を出し、それがだんだん増大していって、観客に届いて行くような演奏だった。ワークショップ参加者は大感激。

その後の片岡さんのワークショップがすごかった。「楽器を演奏して音を出す」のではなく、皆さんが「音になる」んです、と言って、太鼓を叩いては音になりきって飛び出す動きをした片岡さん。すると、子ども達も大喜びで音になって飛び出した。そんな風にして、みんなで(文字通り)音になってみた。こんなバカげたことと思われるかもしれないが、ぼくらは真面目にそれをやってみた。やってみて不思議だったのは、音になっているうちに、みんなの出す音が美しい響きになっていったのだ。これは、本当に可能性あり。

菊地さん、市川さんも到着。この二人と徹底的に箏の音楽を深めてみたい。思いっきり大真面目に。大真面目すぎると、真面目なことが分かってもらえないかもしれないが、それくらい真面目にやりたい。最後、17絃をガムランのスレンドロ音階に調絃してガムランの合奏してみた。この響きも楽しみ。

マリンバとピアノのための「くつがえさー音頭」を28日のコンサートに演奏することに決定。合わせをやった。

片岡さんは「真面目」について、相当考えたみたいだ。今回のコンサートに向けて、これまでワークショップで出て来たキーワードは、仏壇、サル、真面目。真面目について、明日もう少し続けてみようかな。