野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

特別養護老人ホームで

今日はアートデリバリーの3日目。特別養護老人ホームで。
まず、大田智美ちゃんが、アコーディオングリーグの曲を、続いてぼくが電子ピアノで「INTERMEZZO」を演奏した。ここで、感想を聞いたが、お年寄りの言うことが理解できない。よくよく聞くと、ピアノとは歌の伴奏をする楽器と思い込んでいるようで、ぼくがピアノ曲を弾いているのに、何の歌の伴奏をしているのか、一生懸命探っていたが分からなかったようだ。そこで、器楽曲に合わせてデタラメに歌っても面白いな、と思い、もう一度、グリーグを演奏してもらい、それに合わせて声を出した。アーとかエーとか歌ってみたけど、そのうち、もっと思いっきり声が出したくなって、エンヤートット〜〜と歌ったら、すごく気持ちよくアコーディオンと混じってびっくり。ノルウェイの作曲家の曲に、日本風の唱法。まるで、パンとアンコが出会ってアンパンが生まれたような瞬間。
その後も、いろいろだったけど、とにかくお年寄りが、ぼくのやりたいことを一生懸命理解しようとして、考えてくれる。「ふるさと」を歌いたいというが、「ふるさと」を普通に伴奏したら、ただのカラオケの代用になるから、ぼくはかなり大胆にアレンジを加え、ハチャメチャに壮大な曲にしていくと、90代の方が、「あの人大丈夫?クレイジー」と心配してくれたそうで、でも「あ、正気に戻った」なんて言いながら、楽しんだそうだ。
ぼくは叫びながら走ったり、丸い太鼓を月に見立てて、月が上ったり沈んだりするのをパフォーマンスとしてやってみたり。こんなことを経て、「先生、前衛だね」とお年寄り。前衛について語り合ったり。
そうやって、その後もぼくは新しい音楽をやってるらしいと思ったお年寄りは、ジャズをやってくれ、とかタンゴだ、とか、色んな注文を出してきて、ぼくはその注文を受けて立つけど、ある意味、きちんと意表をつく演奏で返す。最後は、ベートーヴェンをやってくれ、と言われて、第9のメロディーを、ものすごく静かにゆるやかに演奏し、それが本当に美しかった。
見学して(参加して)いた園の音楽リハビリスタッフや音楽療法士の方は、この無計画、無秩序なワークショップに異義を唱えるのかと思いきや、大絶賛してくれた。倉敷の音楽療法学会の講習会で、ぼくの講義を聞いたが、あの場にいる全員がこれを体験すべきだ、体験すれば分かる、と宣言されていた。
とにかく、お年寄りは懐が深いので、孫のような音楽家が真剣にやっている表現は、どんなに奇抜であろうと、驚きながらも楽しんでくれる。スタッフの話では、その場にいたお年寄りは(趣味も人それぞれだが)「(今起こっていることが何だかよく)分からない」という意味での一体感が成立していたとのこと。
とにかく、今日はかなり面白いセッションができた。アコーディオンの音色とお年寄りの声、いい組み合わせだったなぁ。智美ちゃんありがとう。
川口淳一さんに電話し、8月7日のシンポジウムの打ち合わせ。

こんな舞台があってもいい!
こげな舞台があってもよか!
劇場でも 路上でも 崖の上でも 洞窟の中でも
ぼくたちは様々な舞台を体験してきた

でも、まだまだ舞台には可能性がある
こんなこともできる
あんなこともできる

そんな舞台があってもいい!
そげな舞台があってもよか!

野村誠は司会者らしくない司会をし、
ユニークな実践を続ける3人が、おいしい話題を提供する
貴重な映像も公開していく

でも、これは単なる出発点
ここから、着地点を決めず、徹底的に話していく3時間

あんな舞台があってもいい!
あげな舞台があってもよか!

話だけで収まれないかもしれない
途中、パフォーマンスやワークショップになっちゃう可能性もあり
途中、観客参加型のシンポになるかもしれない
舞台と客席が入れ替わるかもしれない
とんでもないアイディアが生まれるかもしれない

どんな舞台があったらいい?
どげな舞台があったらよか?

そんな可能性にワクワクして、申し込む皆さんと
徹底的に考え、楽しみ、笑い、生み出す3時間のシンポジウムを目指しています
申し込み待ってます(野村誠