野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

古式土俵入り、大田智美プレイズ野村誠

埼玉に伝わる古式土俵入りを取材に行きました。釣上に伝わる土俵入り、笹久保に伝わる土俵入り、いずれも子どもが土俵入りをするもので、よーいよいよい、しーっ、などの掛け声が決まっています。保存会の方々が親切に色々教えていただきました。実際に相撲はとらず、土俵入りだけを行うようです。

夜は、大田智美さんのコンサートへ。何をやっても良いと言われて、野村誠アコーディオンソロ作品ばかりを演奏するコンサートを企てて下さり、感謝感激です。

「ブタとの音楽」は、ウィーンとドイツでグジェゴシュ・ストパが初演してくれた演奏に立ち合ったのが2007年ですから、8年ぶりに聞きました。本日が、日本初演でしょう。繊細な智美ちゃんのアコーディオンが、時々ブヒブヒ言います。アコーディオンという楽器は、右手と左手でステレオなのですが、演奏者と近い距離で聞けるので、ステレオ効果も大変面白かったです。そして、思いっきりのフォルテのロングトーンの時に、ピッチベンドで、ちょっとピッチが下がったりするのも、独特で、ああ、こういう曲を書いたのかと、懐かしい再会でした。

お酢と納豆」は、2年前に智美ちゃんに初演してもらった曲。2年ぶりの再演。これは難しい曲ですが、美しい曲なのです。雨音と混じり合いながら、ガラス越しに見える外の光景と混ざり合いながら、響いておりました。

「ブログ音楽」は、2006年に鶴見幸代さんと交感日記のように作曲した懐かしい連作20曲。これも9年ぶりの再会で、初演は御喜美江さんでした。

最後に、2004年に作曲した「誰といますか」。これも御喜美江さんのために書いた曲ですが、出だしから非常にスリリングな曲で、駆け抜けていった先に全部融けていっちゃうような音楽です。曲調は全然違いますが、それでも「お酢と納豆」と同じ作曲家が作った音楽だなぁ。

全曲通して聴くと、自分の作曲の拙さに反省すると同時に、ぼくの音楽は、愛するとか、愛でるとか、慈しむとかが、いっぱい溢れている音楽だなぁ、と感じました。そう思わせてくれた智美ちゃんに感謝です。

アンコールも、ぼくの曲でした。まだ、アコーディオンのソロ曲あったっけ?何弾くんだろう?と思っていたら、「オットセイ」。山下残演出の「動物の演劇」のための組曲より。ああ、幸せな時間でした。

ぼくが智美ちゃんに会ったのが、ちょうど12年前。そして、智美ちゃんは、ぼくの一回り年下の申年なので、当時20代前半でした。御喜美江さんとのリハーサルで初めてお会いした時に、うわぁ、すごい天才少女現れたと、衝撃だったことを今でも鮮明に覚えています。その智美ちゃんが、当時のぼくの年齢になったんだなぁ、と時の流れを感じつつ、もう一回り下の今22歳くらいの若い音楽家に、また智美ちゃんからバトンが手渡されるんだろうなぁ、と思うと、ワクワク楽しい気分になりました。