野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

第6回JAA国際アコーディオンコンクール

恐れ多くも、アコーディオンコンクールの審査員を務めさせていただきました。敬愛する御喜美江さんのご推薦でしたし、せっかくの機会ですからお引き受けしたものの、アコーディオン演奏の細部まで、十分に聞き分ける耳を自分が持っているかどうか、不安でもありまして、ドキドキしての会場入りでした。

御喜美江さんが急病のため、今回、ご欠席という大事件の中、7人の審査員の方と審査に当たりました。ぼく以外は、全てアコーディオン奏者の大御所の方々、ぼくの曲を演奏していただいたこともあり、第1回の総合優勝の柴崎和圭さん

世界アコーディオンコンクール優勝で日本レコード大賞特別賞受賞などのcobaさん

ドイツのヴォルツブルグ音楽大学教授のシュテンファン・フッソングさん

1983年〜1995年までNHKのど自慢の伴奏を務められた杉村寿治さん

NHKテレビ「歌謡笑劇団愛のドレミファ3人組」にレギュラー出演中、山田洋次監督の「キネマの天地」などにも出演の山岡秀明さん

アコーディオン歴58年の吉田親家さん

そして、御喜美江さんが欠場のため急遽審査に当たられることになったアコーディオン協会理事長の松永勇次さん

もう、これだけの方々が審査にあたられれば十分な中、作曲家の視点で何か補足できれば、という気持ちで、ともに審査に当たらせていただきました。

しかし、コンサートを普通に聴くのに比べて、コンクールの審査というものは、本当に大変でした。コンサートは、観客として楽しく聴けるのですが、コンクールの審査は途中で集中を欠いてぼーっとするなど許されません。一音たりとも聞き逃さず、ちゃんと審査しなければ、と思うと、凄い消耗します。出場する人は5〜10分の自分の持ち時間に集中しますが、審査員は人数分、全部集中しなければいけません。これは大変なのです。ふうっ。

そして、各出場者に、何かコメントを書くことになっておりまして、それぞれの人の演奏を聴いて、もっと上達するためには、どんなコメントをしたらいいか、短い時間で精一杯の言葉を捻り出す。ほとんど採点することを忘れて、各自の演奏についてコメントしていたくらいです。

アコーディオンを朝から晩まで聴き続けて、耳がアコーディオンになりました。そして、他の審査員の方々との話し合いも、納得のいく充実した内容で、この方はそういう点を聴くのか、こちらは、そう感じていたのかと、本当に勉強になりました。表彰式の後の記念演奏会で、ぼくの作品「あたまがトンビ」を3台のアコーディオンで演奏していただき、感動でした。もちろん世界初演だったので、ミスしている部分も全くないわけではありませんが、今日一日のコンクールで聴いた様々なアコーディオンの魅力が演奏の随所に発揮されていて、あれだけ多くのアコーディオンを聴いた後に、これだけ耳に新鮮に響く演奏をしてくれた3人の素晴らしい若きアコーディオニストに、アコーディオンの未来/音楽の未来を感じさせてもらえたことに、心から感動しました。アコーディオン万歳!そして、御喜美江さんが早くお元気になられますように。