野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

崖の上の演奏会

昨日、一日中、ここの環境を味わい続けたので、今日はみんなパフォーマンスをしたくてうずうず。朝から、牛小屋の前で、真さんやスボウォが牛と共演している。少しずつみんなが目覚めてくる感じ。
アナンもタイから到着。タイの民族楽器(胡弓や笛)を持って来ている。で、みんなで崖の上で即興セッションをやり続け、それを幸弘さんが撮影する。そんな風に一日を過ごした。これだけの大自然の中で演奏すると、演奏が貧弱になりそうだが、みんな実力があるし、場に即した音楽ができる即興力があるから、自然に音楽が発生していく感じ。お互いのバックグランドが違うけど、妙にまとまりすぎず、無理なストレスもなく、適度な緊張感とリラックスをもって演奏が進む。
スボウォは、本当に優れたミュージシャンで、葉っぱであろうと、何であろうと、とんでもないいい音色で演奏する。どこからでも音楽になってしまう。アナンは、とにかく柔軟でユーモアがあり、その場の状況に即座に対応。佐久間くんは、この環境の中で暴れ、チャレンジして、自分の表現を広げていくダンスで、心地いい。この辺のやりとりは、幸弘さんが撮影して、いずれ映像作品として完成するので、編集された仕上がりを見るのが楽しみだ。
で、午前も午後も相当演奏したので、夜はゆっくりしようと思っていたら、スナルディご一行が夜の8時すぎにやってきた。こんな夜道に車がぎりぎり通れる砂利道を延々走ってやって来たのだ。誇張した表現だようが、100回道を間違えて、100人くらいに道を聞いて来たらしい。そもそも、こんな山奥で100人の人に会うのは不可能だろうから、10回間違えて、10人に聞いたのだと思うが、そもそも道を間違えても人と会うこと自体が難しい山奥だ。それでも、やって来たのは嬉しい。
そこで、真っ暗闇の中で夜の即興演奏会が始まる。すると、村人も松明を持って暗闇の中のパフォーマンスを見にやってくる。崖の下の村にも音は響き渡っただろう。ぼく的には、西洋音階の鍵盤ハーモニカで、ガムランの音階に合わせて演奏するのはすごく難しいが、かなり自由に吹いて、うまくガムラン音階と馴染むような吹き方ができた。今年は正月から毎日鍵盤ハーモニカの曲を1小節ずつ書き続けてきたことと、石村真紀とのインプロクラブを時々やってることが、生きてるようだ。今後も鍵盤ハーモニカ演奏の成長を期待。スナルディの声は、本当に表現豊かで、今日は(風邪で喉が調子悪いけど)かなり声での即興をしたくなった。かなりいい緊張感で演奏できた。
スナルディご一行は深夜に下山。きっと何十回と迷いながら、ジョグジャの町に戻るのだろう。