野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ビバ05(オルガン作曲ワークショップ3日目)


横浜みなとみらいホールでのオルガン作曲ワークショップの3日目。今日は、NHKテレビの取材が入っている。そこで、テレビの記者、カメラマン、音声さんの3人を「世界的テレビ局の人」として、子どもたちに紹介し、音声さんのしているヘッドフォンを子どもたち全員に聞いてもらった。
「モノラルなんですね」
石川さんが驚いていた。ステレオじゃないんだ。テレビのニュースだと、あまりその場のライブ感などは、どうせ伝わらないので、逆にテレビ向きのことをやってみよう、と思いつく。
「じゃあ、テレビ用に、短い時間でも伝わることをしよう」
と提案すると、1秒の曲を作ろう、というアイディアが出る。石川さんが一人一秒ずつ演奏したら、と提案。今日は、見学の保護者の方も楽器を持って加わる。それを倉品さんが指さした人だけ演奏したりして、そのうち、ルールめちゃくちゃの即興になった。

その後、静かな曲を作りたいグループと、にぎやかな曲を作りたいグループに分かれて創作。ぼくと倉品さんは、にぎやか組。石川さんは、静か組と曲づくり。そうやっている間にも、順番に子どもたちはホールに行って、一人ずつオルガンの音色を決めていく。

にぎやか組は、30人近くいた。じゃあ、ピアノに合わせて、各自自分のパートを決めて、と指示を出す。各自、決まったみたい。でも、手拍子する人も、サックス吹き鳴らす人も色々いる。じゃあ、似た楽器、似た内容は集まってもらった。すると、リコーダー+オカリナ、弦楽器、打楽器、手拍子などカラダ、鍵ハモ、音の大きい管楽器、の大きく分けて6パートに分けられた。もちろんパート内でも各自違うことをしているが、この6パートをうまく組み合わせれば、曲になる。こうやって、曲づくりができた。

で、ホールに行って、一度、リハーサル。静か組の曲がなかなか美しい。リハーサルが終わったら、NHKは、もうこのシーンは十分です、と言う。そこで、
「いや、ここで撮影してもらうためにやって来たんで、本番もカメラ回して下さい。」
とお願いして、本番。この後、
「今から、ニュースのために初めてオルガンを聞く演技をみんなにやってもらいます。」
と言って、もう既に2日前にあったオルガンとの出会いのシーンを演じる。こういうシーンがニュースには必要だ。ところが、出会いの場面が、今一つなので、倉品さんに演技指導をしてもらった。

その後、NHKの人からインタビュー。インタビューに、「ねらい」とか「オルガンの何が子どもに良いのか」など、ナンセンスな質問が多く、質問を訂正しているうちに、どんどん時間が過ぎていって、昼食時間が奪われる。

午後、ぼくだけ昼食休みがずれていたので、石川さん、倉品さん主導で、ワークショップは進んでいた。行ってみると、ラーメンの歌を作っていた。途中のドンドンドンと叩いて、「おいしい」とか叫ぶ場面が、ちょっと単調な気もしたので、
「もっと、複雑なリズムができるんじゃないですか?」
と言ってみた。複雑だからいいというわけではないが、この小学生たちとは、結構、複雑なことがやってみたい感じ。

で、また、倉品さんがリズムの達人役を演じ、インドのリズムをはったりで説明し始めた。要するにデタラメな歌。それを起点にして、みんなに真似してもらったり、図形楽譜で書いたり、と、何回かの置換をしているうちに、随分、リズミカルなカッコイイ歌ができた。歌詞は「ビバ05、ポピパペポ、ヘイヘイヘイヘイヘイ、ナハナハナハナハ神様」。

全員のオルガンの音色決めが終わり、ホールで「ビバ05」をオルガンと合わせて演奏。これで、終了にしようとしたが、子どもたちがこれだけでは終われない、という。そこで、最後に思いっきり即興演奏をした。これでも、いつまでも続けたい感じの子どもたちだが、まぁ、今日はここまで。

このワークショップが、日本全国どこでもやっていない試みであること、ひょっとしたら小学生がオルガン曲を作るワークショップは、世界でも初かもしれない、ことを子どもたちに伝えた。その上で、この新しい試みに対して、意見を言ってくれるように頼んだ。これから、みなとみらいホールを一番活用していくのは、彼らだ。

記念撮影、ジュースやお菓子での打ち上げ。塾みたいに、毎週やりたい、というリクエストもあがる。

とにかく、大成功でした。子どもたちが、ここまで力を発揮するとは思わなかった。あとは、ぼくがいい曲を書くだけ。