野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

弦楽四重奏「ズーラシア」

横浜みなとみらいホールでのワークショップ「弦楽四重奏を作ろう」の最終回。色々、動物をテーマに大人の人とアイディアを膨らませる。最初は全員でペンギンのぎこちない動きを曲にしようとする。結局、身体性を重視するアプローチをしようと、全員でひしめき合ってペンギンをやってみる。その様子を見て、ペンギン社会の軋轢や悲哀を感じた人、感情的にならずに冷静に淡々と作業としてペンギンになっていた倉品さんに対して、鈴木理恵子さんがプロの演奏家と通じる精神性を見い出して、さすがはプロと感心する一コマもあった。その後、カンガルーについて考えているうちに午前のセッションが終了。
午前中は、あんまり弦の演奏家に活躍してもらう場面が少なかった。それだけワークショップ参加者の気持ちが動物に向いていて、そのベクトルがそれほど楽器に向かわなかった。
そこで、午後は20日の子どものワークショップ同様に、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの3部屋に分かれて活動。弦の演奏家が持ち味を出しやすいように、前回と同じメンバーで、鈴木理恵子さん+野村誠松原勝也さん+倉品淳子さん、安田謙一郎さん+石川泰さんという3部屋に分かれて活動。比較的ゆったりのんびりと時間を過ごした。
チェロの安田さんのグループは、黙々と楽譜を書き続けたようで、なんだか変わった曲がでてきていた。石川さんやズーラシアの長倉さん、安田さんご自身まで譜面を書いていたらしい。ヴィオラの松原さんのグループは、しょうぎ作曲をしたり、倉品さんがコンテンポラリー・ダンスをしたり、詩の朗読を音楽に置き換えたり、様々なクロスジャンルな試みがあったよう。ヴァイオリンの理恵子さん+ぼくのグループは、雑談したり、譜面を書いたり。子どもプロジェクトの時は、ぼくは教えるというより、どうしたいのか、子どもの書いたものの真意を教わっている立場だったが、今回は、「さらに、これを〜〜〜な感じに発展させてフレーズを作ってみては」などなど、なんだか教える立場になっていたのが、新鮮だった。あ、ぼく作曲を教えているや、と思った。
こうして、4回に渡る「弦楽四重奏」作曲ワークショップが終了した。子どもプロジェクトから生れる弦楽四重奏曲第1番「アートサーカス」のイメージはできているものの、弦楽四重奏曲第2番「ズーラシア」のイメージができないな、と帰り道に思った。
なんだか、まだ何かが足りない気がしていた。そして、今日できあがったフレーズを携えて、もう一度ズーラシアに行くべきだ、と思った。長倉さんにお願いして、もう一度、きちんと動物を観察したり、飼育係の人に動物の生態をきちんと聞いたりした上で作曲しないと、「ズーラシア」というタイトルの弦楽四重奏曲は書けないと思う。
12月か1月に、本気で動物園で動物を観察しようと思う。これで、「ズーラシア」が書ける気がしてきた。