野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

弦楽四重奏曲第1番「アートサーカス」

横浜みなとみらいホールで、ワークショップ。ヴァイオリニストの松原勝也さん、鈴木理恵子さん、チェリスト安田謙一郎さんが初合流。安田さんとは今日が初対面。
とにかく、メチャクチャ面白い一日だった。面白い曲が生まれ続けた一日。詳しくは、近日、ここに書き加えます。

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印象に残ったこと

1)安田謙一郎さんと子どものやりとり。日本屈指のチェリスト安田さんが、どんな超絶な譜面でも演奏してくれるので、どんどん調子に乗って複雑な譜面を書く子どもたち(突発的に出現するピチカート、ト音記号ヘ音記号を頻繁に交替させたり、もちろん変拍子でリズムは複雑な上に連符もいろいろ)。それをとにかく譜面に忠実に演奏する安田さんの姿勢が素晴らしかった。

2)松原勝也さんと子どものやりとり。図形やイメージをきっかけに、何でも音にしてしまう松原さんに対して、最初は遠慮してシャイだった子どもたちも、途中から言いたい放題だったらしく、とにかく無理な注文を次々に繰り出すが、それに対して松原さんが自分の持てるテクニックの全てを駆使して、汗だくになりながら熱演してくれたらしい。このやりとり、ぼくは直接は見ていないが、ビデオで見るのが楽しみ。

3)鈴木理恵子さんとぼくは、子どもたちの書いた譜面(絵だったり音符だったり、音符らしきものだったり)を解釈して音に出す作業。例えば「透明な感じの長い音」とだけ書いてあると、理恵子さんが「こんな感じ?」とハーモニクスで色んな音を出したりする脇で、ぼくはそれを譜面に書くのに、今の音、どうやって出した音なのか、ぱっと分からなくって、すぐ譜面に書けず、恥ずかしがる必要はないのに、その場でさっと書いたらカッコイイのに、「えっと、今のハーモニクスの音、譜面にはどうやって書いたらいいんでしょうか?」と質問したりして、ちょっと恥ずかしい。

といった具合に3部屋に分かれて活動したら、3部屋とも全く違ったアプローチになって、どれもがすごく面白い。前回の「オルガンスープ」の時は身体表現から生まれた作曲だったが、今回は一日中、みんなが黙々と紙に向かって書いている場だった(松原さんのグループは書くという作業を介さずに、ディスカッションでリアルタイムにどんどん松原さんが即興で音を出してくれたから、話すという作業だったらしいが)。

とにかく、子どもたち、松原勝也さん、鈴木理恵子さん、安田謙一郎さん、石川泰さん、倉品淳子さん(鳥取公演から駆けつけてくださりました)、ボランティアの皆さん(今回は熊倉純子さんに紹介してもらい、新たに強力なボランティアメンバーが増えました)、スタッフの皆さん、本当にお疲れ様。この雑多な素材を合わせて、アートサーカスという展覧会の持っていたゴチャゴチャしたエネルギーや隙間のある感じ、幅の広さのある弦楽四重奏を書きたいなぁ。

みんなで中華街に行った。

その後、牛島安希子さんと「オルガンスープ」の弦楽四重奏アレンジの件で打ち合わせ。牛島さんはこの春に愛知県芸の作曲の大学院を卒業したばかりの若い作曲家で、「オルガンスープ」の初演にわざわざ名古屋から来てくれたので、アレンジをお願いしてみることにした(ぼくは新曲の作曲でそこまで手が回らないと思うので)。色々と話した結果、「ソルボンヌ・クラシナーの作曲講義」を是非アレンジしたいとのことなので、「オルガンスープ」の最初の3曲をアレンジすることになりそう。楽しみ!