野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

オルガン作曲ワークショップ、その1


今日から、横浜みなとみらいホールで小学生とのオルガン創作ワークショップが始まった。石川泰さん(作曲家・カウンセラー)、倉品淳子さん(俳優)、新山恵理さん(オルガニスト)、小学生22人、それに見学の保護者も20人強、ボランティアスタッフ3人、などなど、というメンバー。

まず、午前中の会場のリハーサル室に入ったら、思いのほか居心地の悪い緊張感漂う雰囲気だったので、自己紹介代わりに自作の「たまごをもって家出する」を弾こうと思っていたけれど、最初に弾くと、ますます緊張した雰囲気になりそうだから、自己紹介のトップバッターを石川さんに譲った。

石川さんは、作曲の話を始めたのに、気がついたらカウンセリングの説明をしていた。そこで、カウンセリングをよく知らない倉品さんと野村で、カウンセリングの演技をしてみよう、と思いついてやってみた。そして、ぼくらのやったのと、どこが違うか、石川さんにもカウンセリングを実演してもらった。プロのカウンセラーのカウンセリングを実際見れて、とても面白かったと同時に、倉品さんの患者になりきった演技もさすが。気がついたら、ぼくはカウンセリングのBGMをピアノで弾いていた。

石川さんは、「カウンセリングとは、聴くこと。聴くは、耳の右側に十四の心と書くから、それくらい聴くという意味だ」と金八先生みたいに説明。それから、持参した全ての楽器を使っての即興演奏「横浜の風」が始まった。使った楽器は、ヴァイオリン、トランペット、クラリネット、サックス、三味線、ピアノで、楽器を持ち替える時に、肩からぶら下げたベルを体を揺さぶりながら鳴らすのが、滑稽。子どもたちに、大ウケだった。

続いて、倉品さんがシェイクスピアの「真夏の夜の夢」から抜粋で演じた。男の子にパック役をやってもらって、時々「うん」とか「はい」と相づちを入れてもらい、二人の演技のテンションの違いが、爆笑を生む。続いて、大道芸のネタ、パントマイム
「特別な女」の上演。これまた、大ウケ。

そして、ぼくが「たまごを持って家出する」を弾いた。二人が笑いをとったので、ぼくは楽器を真面目に弾いた。これで、休憩。かなり濃い自己紹介タイム。休憩中から、子ども達は楽器に興味を示し、サックスを試しに吹いてみる子、トランペットを吹いてみる子、そうやっているうちに、いつの間にか楽器のセッションになった。そんな楽器のセッションになった時、俳優の倉品淳子さんにどう関わってもらえばいいか、その場の思いつきで、倉品さんに「世界的指揮者」を演じてもらうことした。倉品さんは、世界的指揮者「ソルボンヌ」になった。これが、実は、明日以降の展開を左右する出来事だった。

昼食休憩は、大ホールのロビーで。ところが、ロビーの椅子がとても音がよく、これを叩いての合奏が始まってしまい、休憩も休憩じゃなくなった。

大ホールに移動し、リコーダー+笙+オルガンのための「どちらにしようかな」を鍵ハモ+オルガンで演奏することにする。ところが、ホールが響くのに大喜びの石川さん、倉品さんが、声を響かせて、遊びだし、そのまま声の即興がしばらく続いた。そして、「どちらにしようかな」を演奏。リハーサルの時に比べて、オルガンの音が弱く聞こえた。たった、50人くらいの人が入っただけで、こんなにホールの音の響きが変わってしまうとは、想定外。鍵ハモ+オルガンという編成は面白いようで、対等に渡り合えるし、鍵ハモがあることで、オルガンの音も立体的に聞こえる、と樅山さん(作曲家、ボランティアスタッフをしてくれている)や石川さんが言っていた。

その後は、みんなでオルガンの側に行って、どのパイプが震えるかを見てみたり。ここで、また、倉品さんにどう関わってもらえばいいか、困る。そこで、倉品さんに質問をきっかけに、「〜〜みたいな音が聞きたい」コーナーが始まった。「幽霊みたいな演奏」を石川さんにやってもらったら、音で表現するだけで満足できずに、振り返って「うらめしや」の表情を見せる。これが面白かった。オルガニストは、常に背中を向けていて、振り向くことはない。そこで、様々な振り向き演奏をした。倉品さんに振り向き演奏をしてもらう。

そんな中、ゾンビ、あひる、オルガン、さめ、など色んなものになって振り向いてもらったが、「ペンギン」がとっても良かった。

子どもたちは、全員オルガンが触りたくって仕方がないようなので、一人ずつ触ってもらう。子どもたち一人ひとりの演奏にも差が出て、音色にこだわる子もいて、これは可能性があるな、と思った。

その後、色んな楽器で即興演奏+オルガンが「振り向きペンギン」というセッションをした。そこから、ロミオとジュリエットに展開。かなり、いい感じ。

終了後、倉品さんが先に帰った後、会場で打ち合わせ。明日は、今日とがらっと変えて、講義をしよう。そして、講師は、倉品さんに演じてもらう「世界的作曲家、ソルボンヌ・クラシナー」にすることにした。作曲家でない役者が、世界的作曲家を演じると、どんな作曲の講義になるのか?そこから、子どもたちはどんな音楽を発想するのか?楽しみだ