山下残のダンス公演「せき」を見に行く。
山下残は、ぼくが知る限り、日本で一番優れた振付家である。
彼の動き、ダンス観は、非常にユニークで、類似した表現を他に見たことはない。
だから、山下残の作品を見に行くことは、とても貴重な体験になる。
伊丹のアイホールに公演を見に行った。
ぼくの山下残に対する期待が高いこともあるが、今回は満足できなかった。
「せき」では、振付の楽譜にあたる言葉を、映像で投影して見せていた。これがビジュアル的には、かなりうるさくって、残くんの身体、舞台美術、スクリーンの3つのバランスでは、スクリーンのウエイトが強すぎて、伝わってきにくかった。残くんのダンスの表現が、もう一段強ければ、バランスよく伝わったのかもしれない。だから、作品の問題でなく、ダンサーの問題かもしれない。
以前の「そこに書いてある」の時は、手元の本の文字を見て、舞台を見る。二つのビジュアルは分けられていた。見ていないが、「透明人間」では、言葉を「音読」されて、耳から伝わり、視覚的には舞台上のダンサーの動きに集中できたのではないか、と思う。今回の「せき」では、スクリーンに投影される文字が、視覚的にうるさく、ぼくにとっては、山下残自体の動きを見るのに、かなり妨げになった。
これは、ぼくが最前列に座ってしまったことが原因かもしれない。最後列に座れば、ひょっとするとスクリーンと身体のよいバランスが得られたのかも、しれない。
3回公演した3回目を見たのだが、ひょっとするとこの回だけ調子が出なかったのかもしれない。
などと色々考えつつも、山下残は、一歩一歩確実に自分の表現を切り開いてくれると思うので、次の作品に期待したい、と思った。