野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

サンリオ展と藤浩志

熊本市現代美術館で、明日から開催される『サンリオ展』の開会式と内覧会に参加。熊本会場では特別に藤浩志さんが出品しているので、藤さんご夫妻にお会いするのがメインの目的。

sanriocharactermuseum.com

 

サンリオの創業が1960年で藤さんが1960年生まれとのことで、同じ年であるらしい。藤さんは、サンリオのグッズだけを使ってインスタレーションをしていた。日比野克彦さんの参加型の作品も、熊本会場だけでの特別企画。

 

展覧会は、『ニッポンのカワイイ文化60年史』という副題がついているので、サンリオ以外にも様々な「かわいい」文化が登場するのか、と言えばそうではなく、サンリオの60年史である。また、『ニッポンの』とついているので、海外にどのように受容されていったか、などがあるのかと思ったが、そうではなく、『ニッポンのカワイイ文化』が日本においてどのように受容されていったかの歴史であった。

 

あと、『カワイイ』がキーワードになっているが、実はそんなに『カワイイ』が強調されているわけではない。「ぶりっ子」、「いじめ」、「ベトナム戦争」など様々なテーマに対する読者の投稿が生々しい『いちご新聞』は印象的で、単なる消費ではなく参加していくところが面白く、その意味で、本展が藤浩志や日比野克彦の作品で、「共につくる」あり方を提示しているのは合点がいった。

 

今回の展示で知ったのだが、藤さんが「かえっこ」を始めて24年とのこと。ぼくが「しょうぎ作曲」を考案したのが1999年。「しょうぎ作曲」で一つの価値観に回収しないやり方での多文化共存としての共同作曲のやり方を提示してから25年かぁ。東西冷戦が終わり、アメリカ一強時代、9.11のテロが起こる少し前の20世紀の終わりのことだった。

 

あれから25年、無我夢中で活動してきた。義務感とか責任感とかじゃなくて、本当に面白くて楽しくて、のめり込むように続けてきた。でも、楽しんで活動していく中で、社会の中で無視されている声をいっぱい耳にして、少しでも力になりたいと思って活動してきた。でも、深刻になりすぎると自分らしさを失ってしまうので、常に楽しくユーモアを交えて伝えてきた。楽しそうだったり、ユーモラスだと真剣に聞いてもらえない時もあり、深刻そうだと重たくて聞いてもらえない時もある。だから、ずっと伝え方を模索してきたし、今も探している。楽しいことと深刻なことが両方あるようなことを、現実に正面から向き合いながらファンタジーであるようなことを、やってきたし、やっていくぞーー、と藤さんとの再会とサンリオ展から思った。