野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

〈音楽ならざるがゆえに真に音楽〉/保坂和志/ハリー・パーチ

今年初の遠征を終えて、熊本に戻る。

 

昨夏の《タリック・タンバン》初演の評(齋藤俊夫)を(今頃)読んだ。

mercuredesarts.com

 

「普遍」を偽る文化産業の基本的攻撃法は〈囲い込む〉という手段である。劇場に、音盤に、インターネットに、階級、国籍、人種などの分断と一体となって〈コンテンツ〉を囲い込む、それが文化産業の攻撃である。それに対して〈作品〉でありながら「色々な入口のある風通しのよいガムラン」の可能性――「だじゃれ音楽」の「ガムラン」――を探求する、筆者はここに野村の生涯の賭けを見る。制度としての、産業としての音楽を脱して、〈音楽ならざるがゆえに真に音楽〉な何物かの夢を見る。

 

「生涯の賭け」と受け取っていただき、嬉しい。

 

移動中に、保坂和志『季節の記憶』読了。長距離移動中に、小説読むのは楽しい。味わい深い登場人物が出てきて、保坂ワールドの風景と季節と時代がいい。

 

移動中に(年末から読んでいた)Harry Partch『Genesis of A Music』も読了。ハリー・パーチのオリジナル楽器の説明も詳細にあって、それぞれの楽器をどうやって記譜するかも説明してくれて、自作の解説もあって、音律の歴史も古代中国やギリシアから20世紀まで詳述されているし、自身の音律の理論も説明しているし、音楽と身体の関係のことなども論じている。それらが、どうして、こんな章立ての順番で読まさせられなきゃいけないのか、全然理解できないけど、熱意が伝わってくるので読み応えはあった。

 

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野村誠のウェブサイトを里村さんと整理する作業を少しだけ進める。