野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

はじまりはマルチニーク

1ヶ月後の2月3日『世界のしょうない音楽祭』に向けて、作曲をしている。今回のテーマは、「ラテン音楽」ということで、様々なラテンが入ってきているが、大阪音大の渡邉未帆先生からは、カリブ海の島マルチニークの音楽のエッセンスを教えていただいた。

 

マルチニークについて里村さんに聞くと、西成彦さんの本『クレオール事始』(紀伊國屋書店)、『耳の悦楽』(紀伊國屋書店)、パトリック・シャモワゾー+ラファエル・コンフィアン『クレオールとは何か』(平凡社)、エメ・セゼール『帰郷ノート 植民地主義論』(平凡社)などを本棚から出してくる。ラフカディオ・ハーンは、マルチニークに住んだことがある。

 

マルチニーク島は、1,128㎢だそうで、沖縄本島1,199㎢と同じくらいの広さなのか。

 

マルチニークの音楽のリズムは、全然違ったニュアンスで新曲の中に盛り込まれた。その他、バリガムランのギラッのリズム、インドのサラスヴァティー神の音階、スペインのボレロのリズム、そして相撲太鼓に触発されてワークショップ参加者たちが考案したオリジナルのラテンリズムなどが登場する国籍不明のどこでもありどこでもないラテン音楽。タイトルを何にしようと里村さんにも相談する。暫定的に、《はじまりはマルチニーク》。

 

編成は、尺八(プロ)、尺八(初心者)、ガムラン(プロ)、ガムラン(初心者)、ブームワッカー、打楽器(シェイカー、ギロ、タンバリン)、ギター、シタール(プロ)、シタール(初心者)、ヴァイオリン(プロ)、ヴァイオリン(初心者)、ヴィオラ(プロ)、ヴィオラ(初心者)、チェロ(プロ)、チェロ(初心者)、ヴィオラ・ダ・ガンバ・トレブル(プロ)、ヴィオラ・ダ・ガンバ・トレブル(初心者)ヴィオラ・ダ・ガンバ・バス(初心者)、ピアノ。

 

植民地時代の名残で、現在もフランス領で、西洋とアフリカの音楽が混ざり合った独自な音楽があるマルチニーク。様々な政治的歴史的経緯で、混じり合った結果に生まれた音楽。今、「世界のしょうない音楽祭」では、21世紀という時代に、国家や民族を超えて相互理解し交わりあっていくために、一つの音楽文化に依拠しない音楽の創造を行なってきている。純粋な邦楽とか、純粋なバリガムランとか、純粋なクラシックとかも、もちろんあって良いのだけれども、そればかりを追求すると、排除の論理が生まれて、対立や戦争につながっていく。相互理解をする上で、バリガムランなのに、邦楽だったり、西洋クラシックなのに、インド音楽だったりするような、そうした音楽を21世紀のぼくらは必要にしている。それも市場原理によるワールドミュージックではなく、自分達のコミュニケーションの基盤のための音楽。それを、庄内という非常にローカルな場所から考えること。

 

だいぶ、作曲も大詰めになってきた。

 

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