野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ガチャ・コン音楽祭Vol.3『つくるはつづくよ、どこまでも』

びわ湖・アーティスツ・みんぐる2023『ガチャ・コン音楽祭Vol.3 つくるはつづくよ、どこまでも』も最終日。

 

朝10時から、米原滋賀県立文化産業交流会間にて、こどもプログラム『アートをあそぶよ、いつまでも』を開始。ダンスチーム、音楽チーム合同で、野村の自己紹介《鍵盤ハーモニカ・イントロダクション》で「正解は一つではない。自分で色々考えてよい」というメッセージを伝え、田辺響さんのアサラト演奏を聴いて/見てもらい、楽器ではないようなものでも、音楽ができるし、音楽している姿自体がダンスのようであることも感じ取ってもらう。その上で、全員で体を動かし、声を出し、ウォーミングアップ。10時半には、ダンスチーム、音楽(山本啓)チーム、音楽(田辺響)チームの3部屋に分かれて、それぞれのワークショップ開始。

 

ぼくと永尾美久さんは、高宮駅に移動。11時すぎに駅に到着。プラットホームに美術家の藤野裕美子さんの作品設営中。トラブルなく順調に進んでいて安心。青空の下、陽光が和紙を透けるのが美しい。

 

30分弱の高宮駅滞在を経て、米原に戻る。午前中のワークショップを経て、こどもたちはお弁当タイム。ぼくもお弁当を食べると、食事の終わった子どもたちが、ぼくの周りに集まってくる。さっき初対面だったのに、もう仲間として話してくれる。午前中のワークショップで、距離がどんどん近づいたのだとわかる。

 

12時半頃から、午後のワークショップが始まる。ダンスは振付が完成していて、本番を想定してリハーサルしている。啓チームの音楽は、輪ゴムや金属トレイや菜箸などを駆使して楽器を作っている。響チームは、竹を切って作った楽器で、響さんの指揮で竹のアンサンブルができている。

 

1時半には、全体で集合してお互いの発表をする。どれも見応え/聞き応えがある。ダンスチームの衣装がずるい、と音楽チームから声があがり、野田まどかさんの私物である大量の布を、音楽チームの子たちも身に着ける。

 

2時過ぎにトイレなどを済ませて、ダンスチームと響チームが出発。(啓チームは、40分後に出発なので、ワークショップが継続)。米原駅までの徒歩で15分くらい。この道中も、走ったり話したりお茶を飲んだり、楽しい遠足。

 

2時37分米原駅発の近江鉄道に乗って、出発。電車の車内もそれぞれが楽しんだり、本番の打ち合わせしたり、こどもたちも興奮。彦根駅で電車を待ち合わせている間に、対岸のJRのホームにいる(見ず知らずの)若者に手を振る子どもたち。若者が手を振り返し、交流が生まれる。こどもたちは、「響くんいるでーー。こっち、こっちー」と叫ぶ。5分間の停車時間の中の交流。

 

3時2分、ぼくは高宮駅で下車。ダンスチームは多賀大社前行きの電車に乗り換え。音楽(響)チームは、そのまま電車に乗って、愛知川まで行く。その頃に、音楽(啓)チームは米原駅へ。3チームが、それぞれ電車で高宮駅に到着できるようにスタンバイ。

 

香港からi-dArtのメンバーが到着。近江鉄道の駅名を書いた切り絵、太鼓踊りの太鼓を描いた絵を布にプリントして持ってきてくれている。

 

お客さんが徐々に集まってきて、無人駅のプラットホームが広場のようにも感じられる。藤野裕美子さんが新聞記者の取材に応えて作品の解説をしている。15:25ごろ、お客さんにアナウンスし、最初のダンスが見やすい位置に移動してもらう。

 

15:32に3番ホームに電車が到着し、ダンサーの佐藤健太郎さん、野田まどかさん率いるダンスチームのこどもたちが次々に電車から降りてきて、整列。ダンスパフォーマンスが始まる。観客もかなり乗り出してきて、撮影する人も多数。素晴らしいパフォーマンスだった。

 

15:36に1番ホームに電車が到着。田辺響さんと子どもたちが、竹楽器トガトンを演奏し始める。演奏中に突然雨が降り始める。響さんと子どもたちは屋根のある位置に移動して、演奏をやり切った。

 

15:40。土砂降りの雨なので、予定を変更して、雨の音を聞く時間に。今回リサーチした小野町太鼓踊りは、雨乞いの踊りとも言われるので、これをやると雨が降るのではと心配していた。しかし、保存会の方によると、これは雨を降らせてくれたお礼の踊りとのことで、だから、雨乞いではない、とのこと。だから、天気は大丈夫と思ったが、雨を降らせるお礼の踊りをしたために、突然の豪雨が降っている。

 

15:44に、2番ホームに電車が到着し、山本啓さんと子どもたちが到着。雨は止まないが、空は明るくなっている。このチームの音楽は、音量も大きくないので、やむのを待って演奏にしたい。しかし、止まないので、予定を変更して、ぼくが雨を止ませる演奏をしようと考えた。しかし、これに子どもたちも加わるというので、雨乞いではなく、晴れ乞いの演奏。子どもたちの音が小さいので、お客さんの近くに行かないと雨音にマスキングされるので、音を聞かせるために、観客の中を練り歩いた。晴れ乞いの演奏が天に届いたのか、雨がやんだ。

 

15:50ごろ、香港から来たi-dArtの紹介、藤野裕美子さんと美術チームの子どもたちの紹介。16:00ごろ、予定よりも5分ほど遅れて、予定通り、同時多発のパフォーマンスが始まる。

 

響くんがアサラトを演奏し、観客の注意を引きつけている。対岸の1番ホームで佐藤健さん、まどかさんのダンスが始まっているので、ぼくは鍵盤ハーモニカを吹きながら1番ホームに行くと、それに気づいた子どもたちがダンサーの二人の方に走り寄っていく。ぼくは、駅の改札の金属をドラムのように叩く。響くんがアサラトを叩きながら、線路を渡って改札の方に来る。ダンサーの二人は踊りながら線路を渡って、2番ホームを目指す。ぼくは響くんと入れ替わるように、線路のダンサーと少しだけ絡みながら、2〜3番ホームの間にある待合室の小屋へ行き、ヴァイオリンの山本啓さんとセッション。小屋を出ると、i-dArtとダンサー二人が写真撮影のような絡みになっている。そこに一瞬、関わっていると、同時多発のシーンの終わり(16:07)の合図であるタライに豆を入れた演奏で、響くんが2番ホームに移動してくる。

 

ここからフィナーレのシーンになる。タライの演奏から響くんのジャンベで太鼓踊りのリズムとぼくの太鼓踊りのメロディー。ヴァイオリンのピチカート、ダンサーがそれぞれに踊っている。響くんの周りに子どもたちが集まり、一緒にタライや竹を鳴らしてリズムをとっている。

 

藤野さんが舞台セットとしての木枠をリアルタイムでインスタレーションしていく。ここで響くんの太鼓はなくなり、響くんが木枠に竹の楽器アンクルンを設置したり、ダンサーが木枠に関わったりしていく。アンビエントサウンドになっていくので、ぼくは子どもたちの太鼓も、リズムではなく、音響的に響かせるように指示する。小屋の中のヴァイオリンも高まっていく。背伸びして、アンクルンを演奏しようとする子ども。ぼくは子どもを抱え上げ、アンクルンを一緒に演奏する。響くんも子どもを抱え上げる。

 

16:20、終演時刻が近づき、響くんがフィナーレに向けてジャンベを叩き出す。子どもたちも響くんの周りで楽器を鳴らす。ダンサーは目まぐるしく動いている。啓さんのヴァイオリンとぼくの鍵盤ハーモニカが絡み重なり合う。藤野さんのエンディングの合図を知らない子どもたちが演奏に加わっているので、子どもたちに合図を伝える。16:25藤野さんの養生テープの音で終演。

 

次の電車が来るまで少しだけ時間があるので、アンコール的に、音楽チームの子どもたちに、雨音のしない環境で、もう一度だけ演奏してもらう。16:32本当の終演。

 

その後は、記念撮影などの後、撤収。藤野さんの個展と言ってもいいほどの大規模な展示が、ほんの数時間だけ高宮駅に現れて、幻のように撤収されていく。展覧会も有限時間ではあるけど、1週間とか数ヶ月とか、設営後に長時間展示が続くことが多いけど、ほんの数時間の展示でもったいない。そして、どしゃぶりの雨で作品が痛んだことももったいない。と同時に、こんなに劇的な環境の中で変化した展示でもあり、今回、藤野さんは普段とは全く違うアプローチで様々なチャレンジをされたので、今後の彼女の活動につながる大きな揺さぶりをかけるような豪雨のようにも感じた。撤収。そして、打ち上げ。

 

この事業は3年間で終わる(らしい)ので、ぼくの役目もこれで終わり。この3年間で、ほぼ滋賀在住のアーティストに出演していただき、ぼく自身にとっては共演したことのない新規のアーティストの方々とばかり仕事をさせていただいたので、大変ではあったが刺激的でもあった。ご出演いただいたアーティストを列記すると、以下のようになる。

 

あかね児童合唱団(合唱)

井伊亮子(フルート)

岡田健太郎(シンガーソングライター)

佐藤健太郎(ダンス)

仙遊社(雅楽

田辺響(パーカッション)

谷口未知(ボーカル)

長岡野亜(映画監督)

ニシジマアツシ(サウンドアート/凧)

野田幸恵(美術)

野田まどか(ダンス)

日撫神社角力踊り保存会(相撲甚句

日野少年少女合唱団(合唱)

藤野裕美子(美術)

宮本妥子(打楽器)

八妙会(水口囃子)

柳沢英輔+Gacha Gong Band(ベトナムのゴング)

山本啓(ヴァイオリン)

 

『つくるはつづくよ、どこまでも』での数多くの出会いに感謝し、ここが終わりではなく、ここからも「つづいていく」何かに期待。みなさん、おつかれさま。

 

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