野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

ウマイレガワ作曲中/打ち上げのち会議/雅楽のコスモロジー

塔本シスコ展に向けての作曲。《ウマイレガワ》に取り組んでいて、一日中絵を眺めている。昨日は歌詞をもとに考えていたが、絵を見ているうちに、12羽いるアヒルの目の位置だけを音符だと思って弾いてみる。こういうことをすると、シスコの絵を細部まで見るようになる。続いて、4頭いる馬の目の位置を音符だと思って弾いてみる。これまた面白い。背後に走る汽車に触発されて出てきたリズミカルなフレーズを弾いているうちに、4人の女の子の動きが躍動的な踊りに見えてくる。演奏しながら弾くと、今まで以上に絵が語り出す。

 

不知火美術館でのKOSUGE1-16の打ち上げにお招きを受ける。美術館の里村さん、アーティストの土谷さんに加えて、設営チームの方々とも交流できた。宇城市在住のゼンさんはミュージシャンでもあるらしく、福岡から来られたミヤタさんは以前、福岡トリエンナーレの時にお世話になったご縁もあったとのこと。九州の方々と繋がりが増えていくのは嬉しい。

 

香港のi-dArtからオンラインワークショップのお誘いを受けているので、その件について、問題行動トリオのミーティング。上記の打ち上げに急に参加したので、こちらの打ち合わせに大遅刻。失礼しました。本当は対面でやりたかったけど、コロナが続くし、リモートで。

 

小野真龍著『雅楽コスモロジー ー日本宗教式楽の精神史』読了。これが、めちゃくちゃ面白かった。大陸から伝来した文化として、この10年くらいは、相撲、瓦を中心に調べていた。奈良時代平安時代相撲節会として儀式だった時の相撲から、時代とともに変化し続けて、現代の大相撲がある。それに比べると、雅楽平安時代から、ずっと朝廷で行われてきた。だから、相撲と雅楽の継承の仕方をぼくは対比して考えていた。ところが、この本を読むと、時代と共に雅楽は変化してきたことが理解できる。相撲ほどの大きな変化はないとしても、明治時代に相撲が国技となったような極めて近代的な演出は、雅楽にも無縁だったわけでないことがよく分かる。大阪の四天王寺聖霊会に関わりがある著者が、明治以降に排斥された仏教における雅楽神仏習合としての雅楽の宇宙について、想像力が掻き立てられる本だった。

 

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石清水八幡宮最大の行事であった石清水放生会(1433)について、

 

新楽、高麗楽、林邑楽などの各種舞楽が続き、神主祝詞・公家十列・御馬曳立・大行道・導師呪願礼仏・導師表白・相撲十七番などがあり、夜に入って神輿還御となります。(p.176)

 

という説明があり、相撲十七番かぁ、(1174年が最後の)相撲節会と同じで、びっくりする。260年経って、相撲十七番は、別の形で残っていたのかぁ。