野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

メシアンを弾いてみた/エリントン・センチュリー

昨年の年末は、中川賢一さんとの2台ピアノのコンサートに向けて、メシアンとか自作とかピアノ猛練習していた。別に本番が控えているわけじゃないけど、パワーを使う曲もたまには弾いていないと、体力衰えて弾けなくなっちゃうんじゃないかと思って、メシアンの《アーメンの幻影》の第2ピアノを全曲弾いてみた。いい運動になった。ピアノを思いっきり弾くと、曲によっては跳躍が続いたりしてなかなかな運動量。適度な運動は体が喜ぶ。コロナで本番が減ったから、こうやって力一杯演奏する機会が減ってるなぁ。もっとコンサートやりたい。

 

メシアンも個性的で、とっても自由な作曲家だと思うが、デューク・エリントンも自由だと思う。It's Freedomというエリントンの曲も自由だ。

 

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デューク・エリントンの自由さが好きで、その魅力を自分のものにしたいと思って買ったDavid Schiff著『ELLINGTON CENTURY』(University of California Press)を読了。本当に面白い本だった。20世紀を代表するジャズピアニストの一人であるデューク・エリントンは、優れた作曲家でもあり、作編曲家のビリー・ストレーホーンとタッグを組んで数々の名作を生み出している。この本は、エリントンについて多角的に書かれた本だが、最後のチャプターがエリントンの宗教音楽について。ジャズのビッグバンドに、子どもの聖歌隊やソプラノ歌手などが加わり、旧約聖書新約聖書がジャズのイディオムで教会で演奏される晩年のコンサートは、以前、中古レコードで購入し一時期よく聞いていた。

 

例えば、《はじめに神は》(In the beginning God)という曲は、旧約聖書の最初の一節の、イン、ザ、ビ、ギ、ニング、ゴッドの6音節で6音のメロディーの6音をピアノが1音ずつ紹介していくイントロから始まり、バリトンサックスがゆったり歌い、クラリネットカデンツを経て、ようやく歌がin the beginning Godと歌い出す。そして、山もない、谷もない、道もない、〜〜もない、クレジットカードもない、テレビもない、予算もない、、、とスピーチになる、という壮大な展開。その後も、スイングするビッグバンドにのせて、聖書の言葉を合唱団が叫んだり、ファンファーレがあったり、次々に曲調が変わり場面が展開していく。

 

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黒人差別の問題やベトナム戦争や色々なことがあった上で、50年前の宗教ジャズがあって、それは、現代を生きるぼくたちが今の問題に向き合いながら、どうやって音楽をしていくかを見つめ直す上でも、とっても参考になるし勇気付けられるものでもある。