野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

みみずのラプソディ/丸亀ホームステイ

大阪のココルームに行く。ゲストハウスとカフェと大学のふりをしている「こえとことばとこころのへや」。通称、ココルーム。ココルームの企画する釜ヶ崎芸術大学。当時のスタッフだった植田裕子さんが2012年に始めた企画は、もう10年目になる。2003年からココルームをやり続けている上田假奈代さんには、30年以上前に出会った。実験映像の中で、「天使突抜」という自作の詩を木の上で読んでいる天才詩人。20歳にして300年生きてしまったのではないかというくらいの人生の悲しみと喜びを声にし言葉にしていた少女は、当時のようにオープンで多くの人を巻き込む活動を今も続けている。そして、詩というものに、言葉というものに、向き合い続けている。

 

今日は、上田假奈代と砂連尾理と野村誠による釜ヶ崎芸術大学の授業。砂連尾さんと出会ったのは20年ほど前で、出会った頃の砂連尾さんの狂気は、コンテンポラリーダンスという衣装を纏って、その背後からたまに顔を覗かせる臆病者だった。その狂気の砂連尾さんは、明るい場所を好まず、表に顔を出してもすぐに背後に隠れてしまう。だから、砂連尾さんと会っても、社交辞令のような挨拶ができる外交担当の砂連尾さんと話すことはできても、狂気の砂連尾さんは臆病で出てこなかった。誰しもが、そうした狂気を内に抱えている。上田假奈代だって、ぼくだってそうだ。砂連尾さんの狂気は、中でもとりわけ臆病者だったが、この臆病者がどんどん顔を外に出すようになり、ぼくは砂連尾さんと頻繁に会うようになった。

 

この狂気はみみずのようなものである。みみずは暗いところを好み、土の中に潜ってしまう。というのも、今日の授業は、「ことばとからだとおんぱ」だったが、昨日、みみずが1000匹ココルームに届いた。だから、「みんなのみみずのラプソディー」となったのだ。

 

最初に、3月の講座の時に作った「釜芸校歌」を歌った。こんなハイテンションで、ぶっちぎるような校歌を作ったことを、忘れていたが、譜面を見てピアノを弾き始めた瞬間に、あの衝撃は戻ってきた。砂連尾さんの講座で以前できた「かま体操」もやった。でも、今日は、みみずだった。みみずの声にみみをすまし、即興的に詩が生まれた。詩の周りに、音楽とダンスがまとわりついていった。みみずは、人間の手や頭や顔や太鼓の上にも引っ張り出された。さぞかしびっくりしたことだろう。

 

講座の直前に、池上恵一さんがマッサージをしてくれた。体をいたわってもらいながら、講座の打ち合わせをした。からだもほぐれたが、心もほぐれていた。凝るってことは、緊張しているんだよなぁ。いろいろな仕事で緊張感もあるけど、緩んだ状態で最大に力が発揮できるような、そんな境地に少しでも近づきたいなぁ。

 

よりによってこんな日に、Nadegata Instant Partyの丸亀で行なっているリモートでホームステイするプロジェクトに参加することになった。里村さんと二人で熊本代表として参加した。熊本に引越して、まだ半年なんだけど、いいのかな。大阪にいるけど、いいのかな。まっ、いいか。ホームステイ先の初対面の方は、とてもとても魅力溢れる方だった。明日もホームステイするよ!ありがとう。