野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

コントラバス奏者の声を聞く/車内放送歌合戦/門限ズ+ボーイズ

コントラバス奏者の近藤聖也さんとzoomで繋いでコントラバスについて教わる。近藤さんから「ことばとコントラバス」というお題で作曲委嘱を受けて、現在、作曲中。近藤さんの書かれた原稿を読んだり、近藤さんが影響を受けた溝入敬三さんの「コントラバスとらの巻」という本を読んだりすると、誰もそんなつもりはないのに(無自覚に)コントラバス奏者を虐げているのだ、と気づかされる。大きな楽器を持って移動し、体力を使って低い音を出しているのに、縁の下の力持ちみたいな感じで目立たない。その待遇に怒ることなく、支え続ける人も多い。でも、実は不公平であると思っていたり、妬んでいたり、色々複雑な感情を持ちながら、コントラバスのための音楽とは何か、と考えているのだ。

 

そして、そんな話を聞くと、すぐに影響されて、ぼくは急にコントラバスの味方になって、コントラバスが主役の音楽を書くと心に誓うのだった。歌が伴奏でコントラバスが主役なのだ。こうやって考えたいたら、さらにコントラバスの低い音は速いパッセージも弾きにくく、コントラバスの独奏曲となると、高い音で超絶技巧が華々しく出てきたりする。そうなってくると、ぼくは低い音の味方になって、コントラバスの低音が主役になる曲を書くのだ、と心に誓うのだった。近藤さんは、ぼくの数々の質問に応じて、二刀流コントラバス(両手に弓を持って演奏)とか、うちわで演奏とか、色々やってくれて、最後には、コントラバスバスクラリネットみたいな音色まで出て、コントラバスは面白い楽器だなぁ、とすっかりコントラバス贔屓になる。打ち合わせが終わっても、コントラバスの曲のスケッチを続ける。

 

竹澤悦子さんから「ガチャ・コン音楽祭」の駅名ソング「尼子」、「フジテック前」、「京セラ前」、「市辺」、「水口城南」の5曲の完成録音が届く。これで、「車内放送歌合戦」の24曲が完成した。10月1日〜31日まで1ヶ月間、近江鉄道の900形車両でかかる。電車の車内で聞くの、本当に楽しみだなぁ。

 

夜は、九州大学ソーシャルアートラボとの実験で、門限ズの4人とボーイズの3人での舞台作品づくりのためのオンラインリハーサル(これ、プロジェクト名つくらないとなぁ)。このメンバーで色々試行錯誤するのも4年目。zoomを活用してのダンスで、顔の表情のアップや手のアップなど、近接の表現が面白いのと、自宅でも照明を工夫したいので、暗くしたり明かりをあてたり。近景と遠景をうまく組み合わせるための試行錯誤もいろいろやった。平面をどう立体的にするのか。色々、面白い表現や可能性が出てくる。次回のリハーサルは9月2日。こうやって、熊本と福岡と豊橋と東京と宮城でリハーサルしている不思議な時代になったものだ。

 

やっている時は、気がつかなかったけど、ソーシャルアートラボの長津さん、真崎さんは、リハーサル中は画面オフにして見学してた。門限ズのメイ(吉野さつき)は、アーツマネージャーだけど一緒にセッションに参加していて、長津さんや真崎さんは隠れている。ここに境界ってあるんだっけ?と振り返ると思う。あゆきち、けい、のところで介助していた人も画面にたまに映る時はあったけど、隠れている。なんか、その境界のことも話し合ってもいいのかな、と思った。