野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

遊ぶこと/オルタナティブな現代音楽/金星と木星

今朝は、タイで作曲家のアノタイが中心の国際シンポジウムPGVIS2021に、オンラインで参加。親友のアナン・ナルコンがモデレーター。でも、1時間も英語でトークするとなると、ちょっと緊張する。最初にアノタイが紹介してくれる。アノタイにあったのは、2004年だから17年も前だ。その時にぼくと出会った時に一緒に即興演奏したこと、アユタヤで即興したことなどを、まるで昨日のことのように語ってくれて、あの出会いの体験は今でも生きてるんだなぁ、と思った。

 

その後、アナンがモデレーターとして、ぼくを紹介してくれる。ぼくの色々な面を的確に紹介してくれて、しかも、高校時代に戸島美喜夫先生に言われた言葉まで紹介してくれる。それにしても、アナンはぼくが昔ちょっと話したことなども、しっかり覚えていて凄い記憶力と情報処理能力だ。わかってたけど、この人只者じゃない。

 

そして、アナンはぼくのプレゼンが何一つ始まる前に、「遊ぶ」というテーマを切り出した。「だじゃれ音楽」は、まさに「遊ぶ」だ。古語では「遊ぶ」は演奏することを意味する。タイ語でも、「レン」=演奏する/遊ぶ、「ガンサデーン」=演奏する、という二つの言葉があり、英語でもplayは、「遊び」でもあるが「演奏する」でもある。

 

その後、ぼくが準備したスライドをもとに進めていったけど、アナンがいっぱい話を膨らませてくれて、こんなにスライド準備しなくてよかったと、今頃気づく。ワールドスタンダードな現代音楽が一つあるんじゃなくって、オルタナティブな現代音楽が世界のあちこちに存在している。だから、ぼくはオルタナティブな現代音楽を探し、世界のあちこちを旅する。そして、アナンとかメメットのような独自の現代音楽を展開しているアーティストに出会ってきた。そんな話から始めた。「オルタナティブな現代音楽」という言い方を、アナンは面白がってくれた。

 

音と音をつなぐ、和音と和音をつなぐ、楽器と楽器をつなぐのが作曲家の役割ならば、国家と国家をつなぐ、民族と民族をつなぐ、社会と社会をつなぐ、なども広義の作曲になる。それは、普通は政治家の仕事だよね、とアナンが言うが、作曲の考え方がそこにも応用できるように、ぼくは思っていて、その上で「だじゃれ音楽」は有効な方法論の一つ、と思っている。

 

こういう発想にいたる経緯としての東日本大震災原発事故とその後に考え、「千住だじゃれ音楽祭」を立ち上げたこと、なども語る。で、ようやく「だじゃれ音楽」の話だが、ここまでで結構時間が経ってしまい、駆け足になった。全然、時間足りないなぁ。2014年に「千住の1010人」を開催したこと。その時に、パートリーダーなどファシリテーターが30人ほど必要になり、その経験が2015年以降の「だじゃ研」(=だじゃれ音楽研究会)につながっていく。そして、コロナでオンライン・フェスティバルになり、今2021年、「アジアだじゃれ音Line音楽祭」を準備中。そこは駆け足で本当に少ししか触れられなかったけれども、でも、今日の講演は序章だからいいのだ。今日のトークを聞いてくれたタイの人々が、9月12日の「アジアだじゃれ音Line音楽祭」に来てくれたらいいと思うし、きっと来てくれる気がする。

 

興奮して喋り続けているうちに、気がついたら1時間経っていた。楽しかった。アノタイ、アナン、貴重な機会をありがとう。

 

鶴見幸代さんから、『ガチャ・コン音楽祭』の「車内放送歌合戦」の駅名ソングの録音が届く。「彦根口」、「五箇荘」、「多賀大社前」、「朝日大塚」、「近江八幡」の5曲。どれも沖縄の三線にのせての弾き語り。10月に近江鉄道で曲がかかったら、何度も、電車に乗りに行きたくなっちゃうなぁ。

 

コントラバスの新曲の作曲を少し進める。日没と同時に、東の空に木星が西の空に金星が輝き、二つの星の共演がとてもいい。雨や曇りが続いたけれども、星が見えると嬉しい。金星はすぐ沈んでしまうので、日没からまもなくだなぁ。しばらくは毎日、金星と木星を楽しみたいなぁ。