野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

こどもアートサーカス2021 コンサート&レコーディング

としま未来文化財団との「こどもアートサーカス2021」も最終日で、本日はコンサート。収容人数50%しか売れないため、約200席のチケットが完売で、コロナで大雨にも関わらず、長靴を履いて集まってくださった観客の皆さんに大感謝。

 

財団のスタッフは圧倒的に女性が多い。ぼくが会った人は全員女性だったかも。今回は、衣装までコーディネートしてくれて、ぼくには、カラフルなシャツと緑のベレー帽と赤鼻が準備された。

 

1曲目 野村誠作曲《あやしいサーカス団のテーマ》は、一昨年のワークショップの初日の後、急に書きたくなってホテルで作曲したものが原型。昨年は、それにハープを加えて古国府さんのアニメーションに合わせて作曲。昨年は、収録だったので、コンサートで演奏するのは初めて。今では慣れたバラフォンとハープとピアノとケンハモと歌という音の組み合わせも特徴。

 

 

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ここからが世界を旅したサーカス団が、世界の様々な音楽を紹介するというもの。2曲目が、中川賢一さんの独奏で、オランダ出身でアメリカ在住のJacob TVが作曲した《The Body of your Dreams》で、サンプリングされた英語の声や打ち込みのドラムなどが入っている音源とシンクロするようにピアノを弾く8分くらいある大作。これに、古国府さんが映像をつくると言っていたのが、スロバキア滞在中の彼女は、なんとスロバキア人のアーティストに映像を依頼して、この曲のためのオリジナル動画がつくという豪華なコラボ。子ども向けイベントで、こんな曲とこんな映像が出たことなんてないだろう、という内容だったが、あとでワークショップの子どもたちから、「アメリカが凄かった」とコメントをもらったりしたので、かなり印象に残ったようだ。

 

3曲目はアルメニア民謡《祈りと踊り》。爆音で繰り広げられたアバンギャルド・ヒップホップの後に、静かなハープの祈り。福島青衣子さんの美しい音。そこに、パンデイロ(ブラジルのタンバリン)で野尻小矢佳さんがリズムを刻んでいく。曲ごとに大画面に映し出される古国府さんの手描きの国旗とタイトルも味わい深い。

 

4曲目はスペイン民謡《花嫁はおちびさん》を、鵜木絵里さんの華麗なソプラノで聞いて、スパニッシュな気分になり、5曲目が、香港で出会った作曲家Alfred Wongがジャワ・ガムランをピアノ連弾に編曲したものを演奏。中川さんとピアノでガムランをやると、恍惚としたジャワの空気になって、心地いい。前半最後が、プログラミングのワークショップで作った映像に、昨日の子どもたちのワークショップで作ったシンセサイザーのシークエンス(ループ)を重ねて、そこにあやしいサーカス団が生音で即興するというトリプルコラボ。

 

前半だけで45分。内容も濃密。客席には幼児もいるし、前半だけで十分と思って帰るお客さんもいるかもな、と思ったが、後半になっても客先は相変わらず満席だった。

 

後半の1曲目は、アラスカのイヌイットの声の音源も流れる中、ハープとヴィブラフォンが奏でる渋い響きの音楽に、ボーカルが加わってくる。美しい響き。

 

2曲目は、セネガル民謡のバニレを全員で。途中で観客が足踏みで参加。

 

3曲目が、ブルガリアの13拍子のリズムで、ぼくはケンハモを吹きまくったり、アドリブのソロまでやらせてもらい、ケンハモ大活躍。

 

4曲目は、野村作曲の《相撲聞序曲》で、これにアニメのワークショップで作ってもらった相撲アニメーションも流れた。中川さんと激しく連弾で演奏していると、ぼくの赤鼻がとれた。とれた鼻をくっつけているのが、子どもたちに大ウケした。

 

最後は、昨日のワークショップで作った新曲。昨日、子どもたちが考えた歌詞とかリズムを、子どもなしでプロの5人で演奏する。子どもたちが自分で演奏しなくていいから、難しい曲になった。19拍子の軽快なリズム。客席の子どもたちは、19拍子でノリノリに体を動かしている。途中、手拍子で参加がある。最後は混沌となって終わる。

 

コンサートのお客さんが帰った後に、ワークショップ参加の子どもたちが残って、おわりの会。子どもたちから、コンサートの感想をいっぱい聞かせてもらう。ハープをヴァイオリンの弓で弾く音がよかった、とか、よく見てるなぁ、よく聞いてるなぁ。感想でほめられて喜ぶ音楽家たち。子どものプログラムで、大人が子どもをほめるケースはしばしばあるが、子どもが大人を批評するケースは珍しい。さらに、批評の中で、ほめられて、プロの音楽家たちが、「嬉しい。明日から頑張れる」などと発言するのが面白い。こどもたち、3日間ありがとう。

 

後片付けの後、《相撲聞序曲》のレコーディング。古国府さんのアニメに使うため。実は、8月に入ってから、コロナで隔離になってしまい、一度もピアノを弾いていなかった(弾くチャンスがなかった)。この濃厚な3日間になっても、ほとんどピアノに触れる時間がなく、数少ないピアノ曲を練習する時間にピアノを触って、勘を取り戻すしかなかったが、リハーサル、ゲネプロを経て、本番とレコーディングの時には、だいぶ感触が戻ってきて、なんとか乗り切ることができた。明日、家に帰ったら、ピアノを弾きたい。

 

皆さん、本当にありがとう。そして、おつかれさまでした。どんどん面白いことになってきているので、また次回も楽しみにしていまーす。