野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

夜の美術館の夏祭り

今朝の「四股1000」で聞いた話。インタビューの秘訣で、インタビューが終わって、録音を停止した直後に、一番面白い話が聞けることが多いから、そこを録音する、という話。なるほど。

 

午後は、十和田市現代美術館の夜の公演に向けて、打ち合わせ、配布物用のテキスト作文、リハーサルなど。津田道子作品のために作曲もする。

 

そして、19時半より公演。本日の公演は、美術館の中を以下のように移動していき、移動する度に、盆踊りを踊りながら移動していく。美術館の展示室の風景なのに、そこがダンス公演の場になったり、映像を見る場になったり、盆踊りの場になったりして、美術館なのに、あり得ない光景が次々に出現していく。

 

1 マイケル・リン《無題》への準備体操

2 津田道子《あなたは、翌日私に会いにそこに戻ってくるでしょう。》とのインタープレイ

3 ロン・ミュエク《スタンディング・ウーマン》の振付ワークショップ

4 塩田千春《水の記憶》の影絵芝居

5 ジム・ランビー《ゾボップ》とカエルとヘビ踊り

 

明日も公演があるので、詳しいことは明日の日記に書くことにして、本日の公演に向けて書いたテキストのみ以下に掲載。(物理的には)触れ合えないディスタンスのある中で、ぼく自身は触れ合えた手応えはあった。皆さんは、どうだったのだろう?

 

「夜の美術館の夏祭り」公演に寄せて

 

問題行動トリオは、2020年6月に十和田で、9月に香港で公演を予定しておりました。しかし、新型コロナウイルスにより公演は延期となり、その代わりに、ウェブマガジン『問題行動マガジン』(www.mdkdm.com) を始めました。本公演に至る準備プロセスとして、問題行動トリオが試行錯誤した足跡は、『問題行動マガジン』のエッセイ、インタビュー、動画などで辿ることができます。その後、十和田市現代美術館と連絡を取り合い、コロナ禍で十和田に行くことができない中で、どんな形で十和田をリサーチすることができるのか、どのような形で十和田の人々と(物理的な接触を伴わないで)触れ合うことができるのかの実験を始めます。実際に、インターネットを介して、十和田の食べ物の味を味わうことができるのだろうか?パソコンのモニターを通して、十和田の木に触れたと実感することができるだろうか?展示会場に行けない状況で、間接的に美術館での展示を体感することができるだろうか?こうした実験は、ライブパフォーマンスの本質に関わる疑問、接触するとはどういうことか?同じ場を体験するとはどういうことか? などを見つめ直す時間になりました。ご協力いただいた方々、本当にありがとうございます。

 

1年延期で2021年6月に開催予定でしたが、8月に開催される「三本木ナイト」とリンクするアイディアが浮上し、さらに2ヶ月延期をしました。ところが、「三本木ナイト」自体も中止になりました。そんな中、我々は、夜の美術館で、我々ならではの夏祭りを開催することにしました。

 

夏祭り、盆踊りと言えば、祖先の霊があの世から戻ってきて、その霊を供養する祭りだ、と言われます。現実世界で見えない霊と一緒に踊るバーチャルとリアルが一体となる盆踊りの空間は、リモートワークが一般化したコロナ以降の現代において、対面とオンラインが混ざり合いながら進める会議のようでもあります。私たちは同じ空間にいる人とだけコミュニケーションをするのではなく、自分たちの想像力を働かせながら、異なる空間にいる人や霊とも交流をしています。

 

ディスタンスを取りながら、感染症対策をしながら、お互いに物理的に接触することなく、しかし、濃密に交わり合う夏祭りを、私たちなりに模索して本日の公演となりました。皆さんと、少しでも触れ合うことができましたら幸いです。

 

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