野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

夜の美術館の夏祭り/祈りの音楽

昨年8月に十和田市現代美術館で行われた問題行動トリオ(=砂連尾理+佐久間新+野村誠)のパフォーマンス『夜の美術館の夏祭り』の動画が公開になった。 

 

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夏祭りということで、地元の盆踊り「三本木小唄」を踊りながら、美術館の展示室を移動していき、展示の色々な空間でパフォーマンスをする。だから、この動画には、十和田市現代美術館の展示の風景が、いろいろ見られる。

 

この動画の46分あたりから、2019年に作曲した《問題行動ショー》という曲が流れる。クラリネットとヴァイオリンとピアノで15分ぶっ通しで演奏する曲だ。不思議なことに、2019年の豊中公演の記録動画でも、やはり46分あたりからが《問題行動ショー》。

 

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きっと、2022年2月6日の十和田公演でも、開始から46分ごろに、この曲を演奏するに違いない。しかし、今回は、新たにアレンジしたピアノ独奏版で演奏。15分弾きっぱなしな上に、3人で演奏した曲を一人で演奏するので、本当に大変で、今日も一日中練習していた。同じところを何度も演奏して体に覚え込ませるので、大相撲中継を見ながら練習。無理な動きが多いので、あんまり練習しすぎると腱鞘炎になるかもしれないので、要注意。

 

ぼくにとって作曲をしたり演奏することは、祈りであり、死者や魂との交流であり、自分の意識の奥深くに触れることであり、地球や木々や星々の声に耳を傾けることであったりもする。今日も猛烈に練習している《問題行動ショー》を演奏することは、そうした異世界の扉を開けるための手続きでもある。ただ、譜面をなぞるような演奏では、そこにはアクセスできない。上手に弾くとかではなく、音を震わせ世界を反転させるような演奏をしたいために、練習をしているのだ。

 

今回のピアノ版には、三本木小唄をところどころにトッピングして十和田スペシャルバージョンにしたことも、そのための一つの手続きだ。盆踊りとはお盆に死者の霊を迎える踊りだとすると、これは死者とのダンスでもある。この世とあの世の境界線など、知らないうちに越えてしまうような、そんな音楽を奏でられるように精進したい。

 

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