野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

新しいおっさん/500回の失敗/日英オンライン交流

現在、日本センチュリー交響楽団豊中市立文化芸術センターと作っている野村作曲作品の動画の編集がいくつか届く。センチュリー響の演奏家や事務局、さらには大阪音大の先生のコメントなどが挟まれながら進む中、自分たちがやってきたことの意味を再確認する作業になっていて、足元を見つめ直す機会になっていると思った。

 

里村さんの誕生日なので、ケーキを買いに行く。昨年の今頃は都城にいた。今年は行けるだろうか?ケーキ屋さんを探す旅も楽しく。

 

おっさん姉妹(=片岡祐介鈴木潤)が野村誠作曲《新しいおっさん》(2020)を世界初演するライブ演奏を生放送でYouTube配信。こちらの動画の1時間あたりから。

 

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新作初演がこうして行われることが素晴らしいと同時に、リアルタイムに行われた聴衆からの様々なチャットも面白い。この二人の素晴らしい音楽家が自分たちがやりたい音楽を一方向的に発信しているだけでなく、鑑賞している人々が色々な形で発言/参加しやすい雰囲気をつくり、ある種の交流の場を作っている。おっさんたちは、「新しいサロン」を作っているのだ。野村作品以外にも、色々な曲をやっていて、自分たちが弾きたい曲に重点があるというより、リスナーたちからのリクエストや要望に応じて演奏したり即興している。リスナーの人々は楽しんでチャットに書き込んで盛り上がっていて、そんな大仰に構えずに、自然にチャットを書き込むことが音楽創造への参加になっていく。ある種の音楽解放の場。Ossan Novaが生まれつつあることを感じる。素敵な仕事だ。

 

本日はイベントが多く、ネットTAMトークイベント第3弾「これでいいのか?!どうする?コロナ以降のアートマネジメント」に出演。2時間半に渡って、熱い熱いトークをした。本当にいっぱい話せてよかった。刺激をいっぱい受けたし触発された。触発された結果に、最後の最後に、「500回失敗していいから、実験していこう」というようなことをハイテンションに言っていた。正直、コロナがあってもなくても、危機感を持って活動してきた。アートも人類も絶滅の一歩手前の瀬戸際で踏みとどまっていて、下手すれば既に手遅れなところにいて、ぼくは、それに抗って小さな石を投げ続けている。そんなつもりで30年くらい活動してきた。これまでの30年間、少しずつ種蒔きしてきた。

 

だから、コロナだからと言って慌て始めることはない。様々な隠されていた問題が見えてきたという点では、活動しやすくなったはずだ。蘇生する可能性は0.2%かもしれないアートや人類を見殺しにしない決意で、微かな光を捕まえるための悪あがきをして、次世代に何かを残して残りの人生を送りたい。10年後には根絶やしになってしまうかもしれないアートという産業を、どんな形にしてでも、次世代に伝えたい。どうしてそう思うか。ぼく自身は、音楽にアートに救われてきたし、生きる力の交換をしてきた。

 

コロナで世の中が様々な変化を余儀なくされていて、世界や価値観が変わっていくチャンスで、それは正直嬉しいし追い風だと思う。ぼくらが生きているこの時代から、新しい考え方、新しい表現、新しいアート、新しい働き方、新しい生き方を生み出すことがしたい。それができないならば、そもそも、ぼくが生きている意味なんてないとさえ思う。500回の失敗をしてもいい。今の時代だからこそできる試みを、実験を、今生きている人と模索したい。失敗を恐れている場合じゃない。背水の陣だし、500回失敗してもいいから(そもそも失敗って何だ?)、今だからこそできる何かを生み出したい。ぼくは本気でそう思ってる、ということを、声に出して言えた。今、文字に書けた。500回の失敗を許容できる環境をどうやって作っていくか。そこには、様々な方便、仕組み、やり口、策略がいるんだと思う。そのために知恵を絞る。

 

ああ、興奮したなぁ。皆さん、刺激的なトークの場をありがとう。多謝!!!!!

 

そして、参加できなかったけど、イギリスのヒューやエマがやっているファミリーオーケストラAubergines(ナス!)と、ぼくがディレクターしている千住だじゃれ音楽祭「だじゃ研」メンバーが、今日もオンラインで合同ワークショップやってた。いわゆるプロのアーティストの国際交流じゃなくって、いわゆるアマチュアの即興音楽の国際交流が、こうやって進んでいて面白いことになってきてる。どんどんやろう。

 

そして、これまた参加できなかったけど、今日は、text & sound networkのオンラインミーティング。作曲家のフランチェスカがイギリス、日本、台湾、ドイツ、、、、などの音と文章のアーティストを集めて始めたプロジェクト。こうした動きも面白い。