野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

京成電車のコラボレーション

久しぶりに東京にいる。「千住の1010人 from 2020年」が本格的に始動していて、こちらもフル稼働になってくる。

 

そもそも、中止になってしまった「千住の1010人 in 2020年」の構想では、様々な経路で人々が集まってきて、千住に集うというものだった。京成電車の協力で、電車の車内に100人以上の演奏者が乗車する計画だった。コロナで、このプランはできなくなった。しかし、せっかくだから、電車を使って欲しいという京成電鉄の担当者の方の意向もあり、本日は、京成の車庫にて、映像撮影をした。

 

1010人の音楽をやる、町全体を鳴らす音楽など、言うは簡単でも実際にやってみるのは、本当に大変なことだ。事務局が事前の交渉で、どれだけのやりとりを経て実現の手前まで辿り着いたところで、コロナになって、どれもできなくなった。そうした見えないところでの尽力に感謝。と同時に、全部を水の泡にせずに、そこまでの準備で築いたものを生かしていくことも重要。京成電鉄との関係を築いたことも、一つの財産。

 

でも、車庫で動かない電車の中で演奏する映像を撮影しても面白いのだろうか?そんなモヤモヤも抱えたまま、でも、当初のプランの残像をなんとか繫ぎ止めることをしたいと思いながら、成田空港に近い車庫まで出かけた。事務局の吉田さん、櫻井さん、西川さん。それに映像の甲斐田さんと撮影の方。

 

誰もいない電車の車内を占有して、そこで演奏するのは贅沢な体験だった。つり革と鍵盤ハーモニカの共演など、今まで考えたことも試したこともなかった。つり革も種類があって、動きが微妙に違うし、力のかかり方も違う。動かない電車の車内で電車の揺れを感じようとすると、ぼくが動き回ることになり、飛んだり跳ねたり息を切らすまで汗だくになって演奏した。

 

そうしているうちに、今ここにいるメンバーに電車の乗客になってもらって、そこで演奏したいと思った。京成の職員の方も快く引く受けてくださった。野村が一人で電車の車内で演奏しているビデオじゃなくって、京成電鉄の職員さんや音まち事務局が乗客としている電車の車内で、野村が演奏しまくる映像。敢えて無反応にスマホを見続ける乗客に徹してくださった職員さん。こんな風にコラボができて、「千住の1010人 from 2020年」はここから始まっていくように思った。もっと、乗り物と関わる企画、駅と関わる企画、いろいろ考えられるかもしれないなぁ。電車の車両をどんどん進んでいく演奏もした。贅沢な体験だった。

 

帰りの新幹線で、Björn Heile著「The Music of Mauricio Kagel」(Ashgate)を読了。作曲家カーゲル(1931-2008)に関する本で、2006年に出た本で、最後の3年間くらいの記述がないが、カーゲルの生涯と様々な音楽(そして演劇的/映像的、、、)実験の全容を知れる貴重な本。カーゲルは、「なんちゃって民族音楽」みたいなこととかもやってるし、曲の最後に一番大きなティンパニには紙が張ってあって、そこに飛び込む曲があったりするし、子どもたちが大人にやらされるんじゃなくって子どもたちの意見を反映させる曲があったり、いろんな意味で親近感を覚えるし、読んでいると片岡祐介なんじゃないかとさえ思ったりする。

 

「世界だじゃれ音Line音楽祭」絶賛、参加者募集中!申し込みも少しずつ増えてきていて嬉しい。みなさん、参加しよう。

 

「世界だじゃれ音Line音楽祭 Day1」開催!(令和2年10月31日) | アートアクセスあだち 音まち千住の縁