野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

原点に帰る

昨日まで、世田谷美術館で「作品のない展示室」が開催されていて、昨日は、そのクロージングイベントがあった。ぼくは、行けなかったけれども。会期中、会場では、2014年の3月にやった「老人ホームREMIX #2 復興ダンゴ」の公演の動画も流れていた。あの作品、また今、上演すると、どんな感じになるかなぁ。久しぶりにやってみたい。

 

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砂連尾理さんと寺田美佐子さんの20年前の振付が現代に新バージョンで蘇っていて、でも、この映像は昔話のような今の話のような時間が交差して、とても美しい。

 

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今日の「四股1000」は初心に帰って、全員数字のカウントをした。時々は原点に帰らないといけないと痛感させられる体験だった。

 

安倍首相の辞任が発表される。ぼくは「聞く/聴く」、「耳を傾ける」、ということに重きを置く音楽家だ。「聞く」と「奏でる」を同時にするのが演奏の醍醐味で、優れた音楽家は力強く「奏でる」のと同時に、微妙な音の変化まで「聞いて」いる。安倍元首相は、「聞く」という行為が得意であるようには見えなかった。最終的に辞任に関しても、自分で決めたそうだ。他人の意見を「聞く」ということよりも、「決める」ことが大切らしい。ぼくは、もっと「聞く」ことを大切にする世の中になってもいいのに、と思う。「聞く」ことが尊重される世の中になってもいいのに、と思う。この政権は、どんな政策をしているか、は評価の対象になっても、どれだけ「聞けて」いるかで評価されるケースは、まだまだ少ない。安倍さんは病気ということなので、しっかり休んでいただきたい。首相という立場にある人が「聞く」が苦手だと、本当に独裁になってしまうけれども、首相という立場から解放されて、また、彼には彼の資質を活かせる役割もあるはずなので、そうした場所が見つかっていくと、幸せだと思う。

 

安倍政権の功績は?という問いに、ぼくが思いついた答えは共産党。おそらく、安倍政権がなかったら、日本共産党は以前の日本共産党のままだったかもしれない。が、安倍政権を止めなければと、共産党が他の野党と協調するように変わった。もし、今後、共産党がさらに柔軟性を持つ政党に変化していくことがあるとすれば、それは安倍政権の功績と言えるかもしれない。

 

あと、その時代を生きていた当事者としては、笑えないことも多かったが、後世から振り返ると、安倍政権はマスクの配布のみならず、冗談のようなシュールなことを現実に起こしたので、コメディのネタを多数提供したかもしれない。2010年代をネタにした表現が生まれてくるのは、これからだ。

 

昨日、「オンラインで____する」という寄合で、もっと自分の活動の独自性を伝えられたかもしれない、と思い、過去の日記を読み返しながら、スライドを作ってみようと思う。別件で、オンラインでの活動についてのトークイベントの出演依頼が来た。というわけで、活動を整理し始める。2010年10月の初めてのオンラインで双方向性コンサートの配信の時の視聴者から寄せられたリクエストによるコンサート。その23の曲目は、今でも大きな財産であり得ると思う。

 

1 「ファイル、また買うの?」
2 ジョン・ケージが作曲したらしい「お金持ちの茶わん蒸しには松茸を、庶民の茶わん蒸しには椎茸を…」
3「惑星」より「天王星
4 ラッヘンマンが作曲したらしい「Hat, Scarf, and Gloves」
5 「I love Marmite」
6 "poo poo foof"
7 オペラ「華麗な食卓」から『こぼしたスープを飲んではいけません』
8 "hoppalong not too long"
9 「森に出かけて見つけたキノコを食べたら、笑いがとまらなくなっちゃた」
10 "Ne Vie"
11 「計算してると眠くなる」
12 "Y-O-Y-O-Y-O-Y"
13 Canto Lontano
14 Legame d'Oriente
15 『ネコロンビアのドラムスコ』
16 "Chain of fools"
17 "Nice Sound"
18 「わいわい音頭」
19 "Witch's chant"
20 "Wild Thing"
21 "Tako Sudako"
22 "The Ballad of invisible audience"
23 "Goodby Song" (アンコール)

 

もう一回、原点に帰って。こうして、オンラインでの試行錯誤の歴史を見返すことから、10月31日の「千住の1010人 in 2020年」が見えてくる。