野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

片岡祐介宅を訪問+配信ライブ

楽家片岡祐介さんが、別府の山奥の古民家で生活を始めた、というので訪ねた。明日、大分県の日田でワークショップがあるので、同じ大分県だし、ついでに寄ったのだが、日田から別府まででも2時間かかるので、片岡宅までは大旅行だった。九州は広いし、大分県は大きい。

 

片岡氏の住んでいるところは、見た目にも美しい山里だったが、車の音がほとんどしないのが素晴らしい。山深い奥地のようでも、近くに国道や高速や新幹線などが走り、実は騒音が多い田舎はいっぱいある。ここは、国道や県道から逃れて坂道を登ったエアポケットのような場所なので、交通騒音から逃れていて、自然の奏でるオーケストラだけを聴くことができる。

 

古民家を改装して住む人は、いろいろいるけど、片岡祐介片岡祐介だった。隣の部屋の床はグニャグニャだったけど、グランドピアノの入っている部屋は、しっかり床を補強してあった。寝室を作るよりも前に、まず音楽室を作っている。食べることよりも、寝ることよりも、音が最優先されている暮らし。

 

夜は、配信ライブもやった。片岡祐介を満喫した。冒頭の即興が30分もやっていたらしいし、配信ライブも90分以上やったのだが、ぼく的には、この3倍くらい演奏したくなった。つまり、30分やったから出し切った、ではなく、30分やったら、触発されてもっとやりたくなった、だった。こちらがその配信動画(背景の虫の声もいい)。

 

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片岡さんは、抜群に反応がいいので、即興していて、どんどん音楽が転がるように展開していくので、演奏していても先が読めずに面白い。今年の初めに南川さんとやった『骨の髄まで鍵盤ハーモニカ』は、最初から60分ノンストップ即興と決めて60分ノンストップ即興をした。

 

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世界だじゃれ音Line音楽祭day4で共演したドイツのSimon Rummelも共通する感覚があるので、おつか片岡さんと共演する機会作ってみたいなぁ(以下の動画の2:06:50からジモンくん、ドイツと日本のzoom共演なので、音質はzoomクオリティ)。

 

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ぼくは片岡祐介の音に、「邦楽」の演奏家以上に「邦楽」を感じる時がある。「邦楽」、「歌舞伎」、「能」、「浪曲」などのエッセンスを凝縮して、昭和を通過して、濃縮すると片岡になると思う。片岡さんの音には、無駄な余韻や残響はなく、清くありのままを点で打つ。片岡スピーカーも低音や高音を強調してゴージャス感を出して音に化粧することが一切ない。様々な芸能の伝承は途絶えるかもしれないが、片岡さんに凝縮されて残っている感覚だけは次世代に伝承したいなぁと思わせる天然記念物的感性を持つ音楽家

 

その音楽家が自分の音楽を追求するためのスタジオであり家である場所を作っている。古民家を改装とか、不便なことや大変なことが多いんだけど、それでも自分流にカスタマイズできるので、本当にやりたい音楽とか生活に近づけていくことは、しやすいのだろう。そう思うと、大変だけど、返ってくるものも多いし、やる甲斐があるんだろうなぁ。あのピアノを片岡好みに調律/調整できる人がいるんだろうか?(現れるか)。片岡さんのDIY力を見ると、自分で調律するのがベストのような気もする。

 

ぼくは、作曲・家(さっきょく・いえ)という家をつくるのは構想にあるんだけど、全く実現できていない。家を作曲する。または、作曲が家になっている。片岡さんは作曲・家をやっているつもりではないだろうけど、自分がやりたいことを思い出させてもらい、いっぱい触発された。ありがとう。

 

片岡カレーをいただき(with なちゅらる宇宙人さん=唯一の対面の観客)、かぼすサイダーを飲んでくつろいで後、笑いながら当日の録音を聴いているうちに、気がついたら眠っていた。