野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

リモート合奏の抜け道

この夏は、ゴーヤを育てたら、次々に収穫できている。完熟のゴーヤが美味しいとのことなので、黄色くなるまで収穫せずにいたら、中の種が真っ赤になっていて、その周りのワタはフルーツのようになって、美味しかった。

 

10月31日の「千住の1010人 in 2020年」が、いよいよ大詰め。新型コロナウイルス 禍で、リモートでどれだけ色々やれるかを実験してきている。会議用にデザインされているZOOMは、いわゆる音楽には全く適さない。だから、ZOOMを使って合奏などを試みると、音量バランスが酷かったり、音色が酷かったりで、大概の人から、これは音楽に不適切の烙印を押される。

 

ぼくは、かなりの捻くれ者ではあるので、合奏に不適切と言われると、その困難に向かってみたくなる。4月8日の日記を読み返す。「暗闇の中で光が見えたと感じた瞬間『りんごオーケストラ』!!!!」という日記。「今日は、感激したことがいっぱいあるんだけど、」という一節から始まる日記。

 

暗闇の中で光が見えたと感じた瞬間「りんごオーケストラ」!!!! - 野村誠の作曲日記

 

これを読み返すと初心に帰れる。タイのアナンにメッセージを送る。10月31日の「千住の1010人 in 2020年」で、オンラインでみんなでヌードル食べるの一緒にやろうよ、と伝える。アナンは麺が大好きだ。日本人の麺の食べ方は世界に稀にみるほどのノイズミュージックだ。ZOOMでみんなで麺を食べまくる音楽は、絶対やりたい。アナンはタイの友人たちも誘って参加してくれると言う。アナンにも、ZOOMでワークショップをしてほしいので、そうした相談もした。

 

佐久間新さんにも、10月31日の相談をした。佐久間さんは、6月にZOOMを使った「カエルケチャ祭り」も開催した。「佐久間さん、インドネシア語でZOOMでケチャワークショップしませんか?」と打診する。せっかくリモートでやるのならば、世界中から参加できるように、いろいろな言語での入り口を設けたい。佐久間さんがインドネシア語でケチャワークショップしている時に、野村が別のZOOMで英語でワークショップをし、また別のZOOMでは日本語でワークショップをして、3つのZOOMの演奏を一斉にYouTubeライブ配信して、複数の言語や国々が混じり合うようなイメージ。そんなことを思っている。

 

とにかく、今まで知っていた音楽とは、全然違うアプローチがうまくいく。「フォトグーラファー」という曲は、実際に集まって演奏しても名曲になる気がしないのに、リモートでやると名曲になる。リアルでは成立しないのに、リモートになると成立する音楽のやり方を探す作業は、面白いのだが、なかなか打率が低く、すぐに見つからないので、自分の頭のかたさにめげる。でも、諦めずに、何かないかと探っていけば、「フォトグーラファー」以外にも抜け道が見つかるはずで、それを信じて、今日は、一日中、ああでもない、こうでもないと考えては、袋小路にはまり、また考えては、袋小路にはまっていた。なにせ、ぼくは、これまで旅をいっぱいしていたので、場所が変わると発想が変わって、違った考え方とかできて、名案に出会えることが多かった。今は、家に籠っていて、長距離移動が非常に少ないので、同じエリアを行き来するから、発想も堂々巡りをしやすくなっている。この思考のルーティンから脱却すべく、バーチャルにでもいいから旅をしないとなぁと思う。

 

今日は、ポーランドに行くことにして、Adrian Thomas著「Polish Music since Szymanowski」(Cambridge University Press)を時々読んで、ポーランドの作曲家の曲をいろいろ聞いた。大好きな作曲家Zygmunt Krauzeについての文章を読んでいて、Krauzeのホームページを見たりしているうちに、クラウゼがハイドンをモチーフに即興しているような動画に辿り着き、嬉しくなり、昨年から今年にかけて作曲した「ハイドン盆栽」の譜面を、ホームページのコンタクトのアドレスにメールで送りつけてみた。

クラウゼの後に、Tomasz Sikorskiについての文章を読んでいたら、シコルスキがクラウゼの現代音楽アンサンブルMusic Workshopのために作曲した「無題」について調べていたら、音まちスタッフでもあるピアニストのイムくんがこの曲を多重録音してYouTubeにあげている動画に出会う。ポーランドを旅したら、千住に帰ってきた。イムくんは、韓国にいた頃に、戸島美喜夫の「冬のロンド」を弾いていたりするし、意外なところに結びつくなぁ。