野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

とりあえず+軌道修正

自宅の防音対策、断熱対策で、里村さんと大工仕事をする。木造住宅、木枠の窓と隙間風。リノベーションと言えば聞こえがいいが、「とりあえず」やってみては、次なる難題が現れて、それを解決するために、試行錯誤。ぼくの人生は、「とりあえず」の精神なのかもしれない。「うーむ」と腕組みして悩んでいるだけで人生が終わるよりは、まずは最適解ではないかもしれないが、現時点で思いつく最善策を「とりあえず」やってみて、その経過を見ながら、修正していく。「とりあえず」と修正の日々。

 

即興演奏について、潤さんが、まず音を鳴らしてみる、と書いていた。即興演奏で、「とりあえず」音を出してみて、楽器を鳴らしてみて、それから現場で修正していく、そんな感覚かもしれない。

 

料理をしている時も、「とりあえず」味付けして、味見して、うーむ、何か足りないな、と調味料を加えて微修正しながら、落とし所をさがす。

 

こんなに「とりあえず」が口癖なのだが、計画をしないわけではない。「とりあえず」計画する。実は、計画することも大好きだ。しかし、計画を実行していく中で、柔軟に変更を加えていく。だから、「とりあえず」計画する。

 

企画書で書いたことは、「とりあえず」の企画案で、実現すると細部はどんどん修正されるので、企画案とは違うことが行われたりする。作品を作っていく過程でも、「とりあえず」考えた作品の構想から、どんどん逸脱していくし、逸脱していくこと、当初には想像もし得なかった光景に出会えることを目指している。だから、ゴールはいつも見えない。ゴールが見えないのに、走り始められるのは、「とりあえず」走り始めないと、何も始まらない、と思っているからだろう。

 

だから、「とりあえず」作曲してみる。「とりあえず」楽器を鳴らしてみる。「とりあえず」文章を書いてみる。「とりあえず」話してみる。どこに落ちがあるかなんて考えずに、話し始めてみる。どこにも落ちなんてないかもしれないけれども、話し始めてみる。

 

今日は、「とりあえず」ピアノを練習し、「とりあえず」大工作業をし、「とりあえず」原稿の校正作業などをし、「とりあえず」音楽を聴き、「とりあえず」料理をし、「とりあえず」読書をし、「とりあえず」いろいろなことをした。

 

メシアン・ゲーム」の作曲は、今日は進まず。こんな風にして、2020年の3月が始まった。