野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

逆アウトリーチの必要性

都城市総合文化ホールの企画で、都城滞在中。本日は、高齢者施設ひなたば。そこに障害児支援のゆいまーるが合流した。

 

ホールでコンサートやワークショップの企画をしても、なかなか、そこまで出てこれない人もいる。そうしたホールの外の場所に出て行って、コンサートやワークショップを行うことを、アウトリーチと言う。特に、病院とか、高齢者施設とか、ホールまで外出が難しい人のところにアウトリーチするケースも多い。そして、そうしたアウトリーチの活動が、日本各地でも行われるようになった。今回の企画も、都城のホールが企画だが、ホールでは開催せずに、市内の色々な場所にアウトリーチしてワークショップを行う。

 

こういうアウトリーチの活動は、ホールと同じ内容をただ出前するわけではない。アウトリーチ先が、福祉施設だったり、学校だったり、その場所とそこにいる人の特性によって、ホールで行う事業よりもユニークな内容になっている。こうしたアウトリーチの現場で、世界の最先端とも言える先駆的な試みが行われていることが、しばしばある。しかし、このアウトリーチ先で行われる先進的な事業は、その場にいる人だけが体験していることが多く、今度は、ホールスタッフや普段ホールに来る人々などにとってアクセスできないケースが非常に多い。こうなって来ると、アウトリーチ先での出来事を、ホールに連れてかえる方法を編み出す必要が出て来る。”逆アウトリーチ”が必要になるのだ。逆アウトリーチは、アウトリーチ先の人々をただ単にホールに連れてくるだけでいいのだろうか?そもそも、外出が困難な人のところにアウトリーチに行っているのならば、どのような形で逆アウトリーチが可能なのだろう?そのための模索が、今も続いている。

 

そんなことを思い悩むくらいに、ここ連日の佐久間新さんとのアウトリーチ/ワークショップが面白すぎる。そして、あとから施設職員の方々との振り返りで、驚愕する。普段だったら、こういう場にいられない人がずっといたり、人と触れ合うなんてあり得ない子が、佐久間さんと肌を触れ合って踊ったり、という奇跡が数多く起きているというのだ。

 

それにしても、佐久間さんの身体でのコミュニケーションの取り方は秀逸である。相手の立ち姿、表情に微妙に反応し、微妙に反応せず、いつの間にか関係性を築き上げていく。それは、ダンスなのかどうかも、側から見るとわからないようなやりとりだったりする。学生時代に、サウンドアートや実験音楽などに触れて、あらゆる表現に触れた耳を持つ佐久間さん。さらには、ジャワ舞踊の微妙な動きを体得した身体感覚。そうした感性だから感じられる微細な変化への対応。この佐久間さんの感性、理解できる人にはすぐ理解できるけれども、そうでない人には、いろいろ説明していく必要もある。でも、多くの人が佐久間さんのような感性を体得したら、この世界はまた全然違ったものになるだろう、と思う。そうした鑑賞教育があり得るかもしれない。

 

夜は、問題行動トリオの十和田公演に向けてのインターネット会議。上海、都城、京都、東京、十和田の5都市を繋いでの会議で、6月の十和田での「問題行動」に向けて、ワクワクする話し合いだった。

 

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