野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

日本の現代音楽についてのレクチャー

国際交流基金の助成によるワルシャワ滞在が続く。本日は、在ポーランド日本大使館でのレクチャー。日本の現代音楽について概説して欲しいという大使館側からの要望があり、日本の現代音楽を全て網羅したトークは不可能であるので、特に近年非常に重要な3つのトピックから、日本の現代音楽を語った。

 

一つ目は、鍵盤ハーモニカ。20世紀半ばに考案されて、日本で教育楽器として爆発的に普及した楽器で、現代の日本の楽器と呼んでもいいだろう。野村が、鍵盤ハーモニカ・オーケストラ「P-ブロッ」を結成した1996年以前には、おそらく鍵盤ハーモニカのために作曲家が新しい音楽を書き下ろすことは、少なかっただろうが、それ以来、平石博一、田中吉史、鶴見幸代、近藤浩平野村誠、伊左治直、福井知子をはじめとする数多くの作曲家が鍵盤ハーモニカのために新しい音楽を作曲しているし、松田昌鈴木潤、しばてつなど、数多くのプレイヤーが出てきている。

 

二つ目は、相撲。2010年代以前には、相撲をテーマにした現代音楽の作曲は、ごく僅かしかなかったが、2010年代後半に、日本相撲聞芸術作曲家協議会の樅山智子、鶴見幸代、野村誠が中心になり相撲と音楽に関するムーヴメントが盛り上がり、神田佳子、渡辺俊哉、宮内康乃、片岡祐介などの作曲家も相撲をテーマにした新作を発表。相撲を、神事としての側面、エンターテインメントの側面、競技としての側面、伝統文化としての側面、現代的な側面など多角的にリサーチする。

 

三つ目は、交響楽団山田耕筰が日本で初の交響楽団を作って以来、日本にも西洋のオーケストラが数多く結成され、プロのオーケストラが数多くある。その中で、新しい道を模索するのが、日本センチュリー交響楽団で、野村誠をコミュニティ・プログラム・ディレクターに迎え、若者の就労支援と音楽のプロジェクトを皮切りに、解体工事とのコラボレーションなど、クラシック音楽ファン層以外にアクセス可能なオーケストラの参加型プロジェクトを数多く行う。これをきっかけに、関西を中心に数多くの作曲家が日本センチュリー交響楽団の楽団員のための新曲を作曲するようになり、現代音楽の一つのムーヴメントとなっている。

 

観客数は決して多くなかったが、音楽評論家のクリストフから、ラジオ出演とインタビューの依頼が来るなど、手応えは十分。観客からの質問も数多くあった。

 

夜は、フレデリックショパン音楽大学で、アリーナとアルベルトとリハーサル。アリーナが、曲順を考えてきて、その順番で、全曲リハーサル。アルベルトは、本当に繊細な音色で叩く素晴らしいドラマーで、リズム感も素晴らしく正確。そして、どんどん面白い提案をしてくる。いよいよ、明日がコンサート。