野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

相撲、オーケストラ、箏

さいたま市の岩槻での濃密なJACSHA(日本相撲聞芸術作曲家協議会)合宿の最終日。作曲家のツルミン、モミー、そして、JACSHAを支えてくれるサトムーと、次年度の構想会議。資金面をどうするかは、常に課題なのですが、内容的には、やりたいこと、面白いことがいっぱいでワクワクする。助成金の申請などについて語り合い始めると、暗雲がたちこめる。誰かお金持ちが現れて、JACSHAのパトロンになってくれないものだろうか、と思うが、世の中は、なかなか、そうは問屋が卸さない。しかし、音楽史上も、相撲史上も、未体験な前代未聞の新しいムーブメントであり、我々がこれを実現していかなければ、他の誰もやってくれないジャンルなので、先行投資はやむを得ないのであります。

夜、京都に戻る前に、日本フィルハーモニー交響楽団のコミュニケーション・デェレクターのマイケル・スペンサーさんと、お会いしました。彼と野村は、似た仕事をしています。日本フィルとワークショップをしているマイクさん、日本センチュリー交響楽団のコミュニティ・プログラム・ディレクターをしている野村誠。彼は、ヴァイオリニストで、ぼくは作曲家。立場は違うし、バックグラウンドも違うが、話を始めると、共感できることも多く、冗談やユーモアのセンスも楽しく、お互い、笑い合いながら、会話が弾みました。途中で、東京芸大助教の酒井さんも加わる。話は、明治時代の日本の音楽教育、伊沢修二岡倉天心の話から、歌舞伎の話、イギリスのボーンマス交響楽団やら、ロンドンのカフェオト、デヴォンのダーティントン、ぼくが理学部で学んだこと、量子力学から調弦理論や宇宙物理学の話、野村が共同作曲を始めた経緯、千住だじゃれ音楽祭、センチュリー響とのワークショップ、日本フィルで「第9の大工」として、ベートーヴェン東大寺の建築を比較して説明したエピソード、イギリスのコメディアンの話、ロンドン交響楽団のライブラリアンがこっそりステージに立っていたエピソード、オーケストラの楽団員が本職じゃない楽器で即興をするセッションの話、マイクさんの日本語学習のこと、吉野さつきさんや新井英夫さんのこと、作曲家とオーケストラプレイヤーなどなど、1時間半で、よくこんなに色んな話題を話したなぁ。お互い、作曲家と演奏家で、役割やアプローチは違うが、共通する仕事をしているので、共鳴できる部分がいっぱいあります。こういう仕事をする音楽家が、もっといっぱい出てくると面白いなぁ。次は、一緒に音楽する現場を共有したいと思います。

新幹線で京都に戻りました。子どもの時に、湯浅譲二作曲の「はしれちょうとっきゅう」という歌で、新幹線について知ったわけですが、びゅわーん、byわーん、と走って、帰ってきました。湯浅譲二さんは、箏と十七絃の「芭蕉五句」という曲もあります。自宅に戻り、寝る前に、歯を磨くのと、お風呂に入るのと、箏の曲を書くのが日課になっておりますので、「かずえつこと 即興のための50のエテュード」のno.4を作曲。松尾芭蕉の俳句を起点に、今日のはモーダルな響きで、言葉によるインストラクション。「十七条の奏法」と題し、聖徳太子松尾芭蕉湯浅譲二ジョン・ケージに敬意を表して。作曲後、就寝。