野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

詩人の吉増剛造と25年ぶりの共同作業へ

台風一過で、京都は雨もあがり、遠征時の洗濯物もすぐに乾いてありがたい。

 

来週の月曜日/火曜日に、石巻に行き、吉増剛造さん(詩人)、島袋道浩くん(美術家)と交流する。

 

www.reborn-art-fes.jp

吉増さんと出会ったのは、1994年だから25年前。あの時、ギャラリーそわかの屋根の上に、吉増さんと一緒に上り、吉増さんが銅板を叩き、ぼくら路上バンド(野村誠、島袋道浩、杉岡正章鶴、山下残、砂山典子、中村未来子)と共演した。そして、吉増さんの詩の朗読に、何車線もある道路の反対側から歌い、そして、道路を演奏しながら横切り、ギャラリー内に入って、詩人と路上バンドが遭遇した。その直後に、ぼくはイギリス留学に出かけてしまったが、吉増さんから詩集などを送っていただいたり、一時帰国した水戸まで来ていただいたり、帰国した直後は、どぜう鍋をご馳走になりながら、東京で吉増さんと何かしようと打ち合わせをしたりして、すぐにでも吉増さんと何かをする日が来ると思っていた。2001年のグループ展で、「島袋野村芸術研究基金」をやった時にも、見に来てくださったり、何度か遭遇したのに、気がついたら何もしないまま25年の月日が経っている。美術家の島袋くんが、リボーン・アート・フェスティバルのキュレーターとして、吉増さんと何かをする場を設定してくれた。吉増さん、島袋くんと過ごす時間は特別なものになるだろうと思う。楽譜を書くことについて、吉増さんと話してみたいなぁ。いろいろ自筆の楽譜を持っていってみよう、と思う。または、吉増さんに聞かせるための詩を作曲してみようかなぁ。

 

最近の趣味は、鉄瓶でお湯を沸かす時に、沸騰する直前に音が急に変わって、高い倍音がさーっと消えて、それがほんの数秒だけ続いて、そのあとに、ブクブク沸く。その音の変化が楽しくって、お湯を沸かす音楽が楽しい。

 

最近の別の趣味は、現代音楽に関する本を読むこと。昨日までの遠征の移動中に読んでいた本は、アルヴィン・ルシエ編「Eight Lectures on Experimental Music」で、昨日の帰りの新幹線の中で、ずっと読んでて、数ページを残してほとんど読み終えたので、本日、お湯を沸かしながら読了。これは、ルシエがウェスリアン大学で教えていた時にゲストを招聘した8つのレクチャーのテープ起こし。ラ・モンテ・ヤング、スティーヴ・ライヒメレディス・モンク、フィリップ・グラスなど、8人の作曲家のレクチャーで、冒頭のルシエの紹介、最後の質疑応答もあって、気楽に読めて面白い。ラ・モンテ・ヤングは、最初から学生に質問するように行って、質問に答える形で進める。ヨーロッパは伝統ガチガチでかたくって、アメリカは自由で創造的なんだけど、アメリカ人の多くが芸術なんて要らないってなるのに、ヨーロッパだと芸術が大切だって重宝される、そこがヨーロッパのいいとこ、と言う。メレディス・モンクは、自分自身の声とか身体から音楽をつくっているだけあって、自分自身の音楽のことを終始話しているのに、スティーヴ・ライヒは、他の作曲家について、いろいろと語る。シェーンベルクもケージも初期の作品がいい音楽で、結局演奏されてるのは、初期の作品だ、と言ったり、シュトックハウゼンの「ルフラン」という曲は、シュトックハウゼンのフェルドマン。シュトックハウゼンの「シュティムング」という曲は、シュトックハウゼンのラ・モンテ・ヤング、と言ったりする。フィリップ・グラスは、テーマを限定した方がいいと、作曲家が劇場で作品をつくることに限定して話をする。演出家や振付家や劇作家と共同することにフォーカスする。作曲家それぞれの個性が、こうしてレクチャーの書き起こしだけでも見えてきて、面白い。JACSHA(日本相撲聞芸術作曲家協議会)の3人の作曲家も、きっとレクチャー書き起こして並べても、それぞれの個性が浮き上がって面白いだろうな、などと思ったりした。アメリカの1930−40年代生まれの実験音楽作曲家8人を、短くつまみ食いできる本。学生に向けて話しているので、わかりやすい。

 

www.barnesandnoble.com

本日は、京都は五山送り火。税務署に行って確定申告もしたけれど、大文字山が赤々と燃えているのも、じっくり見た。