野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

問題行動ショー世界初演

ついに、ノムラとジャレオとサクマの「問題行動ショーヨソモノになるための練習曲」の世界初演。開場から開演までの30分間は、カーニバル(=舞台上、客席、ロビーにて、全出演者で同時多発パフォーマンス)を敢行。野村チームは客席最後列の3列に座って、楽器を鳴らし続けること30分。こうして演奏していると、一人、また一人とお客さんが入場してくる。まるで、花道を通って入場してくるお客さんが登場人物で、その入場のための音楽を奏でているような気がする。これまで数多くのコンサートや公演を行なったが、こんなにお客さんの来場を一人ひとり見届けた体験は初めてで、本当に新鮮だった。その間に佐久間チームは、舞台上で連なり踊り、ロビーで始めた砂連尾チームが何をしていたのかは、ホール内からは全く見えないが、そのうち、砂連尾チームもホール客席内を練り歩く。日本センチュリー交響楽団の楽団員は、客席内でヴァイオリンやクラリネットを練習。たんぽぽの家の岡部さんが山口さんの車椅子を押しながら、会場のいろいろなところに出没する。そして、30分間で、徐々にパフォーマンスのテンションが高まってきて、ピークに達した頃に、佐久間チームだったウェイリン(爆発ピアノくん)が、ぼくのそばにやって来て、太鼓を叩き始め、ついにはリーダーになって、アンサンブルを制し、さらに自らの合図で再開する。

 

佐久間さんの蚊取り線香ダンスの途中で、ぼくが椅子の上に寝転んで、ピアノを弾いていたのは、昨年の香港滞在中のピアノソファくんとのセッションへのオマージュ。ピアノをぼくと連弾したあと、すぐソファに横になる彼との時間。人前で決して演奏することがなかった彼が、昨年の6月のArt Fun Dayで野村と共演した時に、メーリンやベリー二が心底喜んでくれたのも、一年前のことだ。

 

砂連尾さんのお灸ダンスの時には、本でピアノを演奏した。韓国語の辞書でピアノを演奏したのが1993年難波べアーズでの大友良英さんとの即興。その後、あまり本を使った演奏をしたことがなかったが、今日は、鍵盤の幅に合う本を厳選し、演奏してみた。

 

野村の新曲の「問題行動ショー」を、日本センチュリーの巌埼友美さん、吉岡奏絵さんが本当に素晴らしい演奏をしてくれた。何が素晴らしいかと言うと、クラシックやオーケストラの演奏ではアウトになってしまうような一線を超えた演奏にチャレンジしてくれたこと。やりすぎないように気をつけるのではなく、やりすぎちゃってください、という野村の言葉を、きちんと受け止めてくれた演奏。この演奏に砂連尾さんと佐久間さんが応えてくれてのダンスだった。

 

香港のi-dArtのメンバーたちが、本番に力を発揮した。それぞれのセッションを強制終了せずに、もっともっと長く味わいたいのが本音だが、出演者全員の良さをコンパクトに伝えていくために、時々強制終了もする覚悟でいた。しかし、各パフォーマンスをi-dArtのメンバーが頃よくまとめて終え、テンポよくショーは進んでいく。本番に強い人たちだ。それにしても、観客の方々にも随分助けられた。客席の空気はとてもよかった。

 

終演後、すぐ楽屋に戻って水を飲んでいたので聞き逃したのが、舞台上でシウクン(仕切り女王)が弾いたピアノ。最後の最後に、さすがだ。

 

アフタートークで、途中でメーリンを呼び込むも拒否されたので、出てもらえないかと思ったが、最後の最後に舞台上にあがって、猛烈にメーリンが語ってくれた。終演後もいろいろな方とお話することができて、触発され興奮し続けた。

 

香港の3ヶ月から1年経って、こんなことが実現して、まだこれから香港の人たちとの交流は続いていくのだろう、と思った。続けていきたい。

 

残念なことは、新聞、テレビ、ラジオの取材が一切なく、香港からやって来ての交流が、一切メディアで報じられなかったことだ。マスメディアでは報じられなかったけれども、これから自分で少しずつでも、今日のことの意味を、発信し続けていきたい、と思った。