野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

「音楽の根っこ」が届いた!

昨日の深夜、イギリスのBeniが自宅で演奏している動画を配信していて、それを見る。今日は、タイのダンサーのピチェが踊っている動画をライブ配信していたので、それを少し見る。夕方になると、イギリスのメアリーが、家の外でアコーディオンを弾き語っている動画をライブ配信していて、それを何メートルも離れたところから立って聞いている人々が点在している。同じくイギリスのコミュニティアートをオーガナイズしているロビンが、自室で何かを語っている動画をライブ配信している。なんだか、次から次へと、世界の各地の人々が、ライブ配信をしていて、自宅にこもっているのに、世界のあちこちと直につながっているようで、不思議な体験だった。

 

さて、まずは残念なお知らせから。4月12日に予定されていた中川賢一さんとのコンサート「愛と知のメシアン!!」の開催が来年1月に延期となる公式発表が出た(ぼくがこの決定を知ったのが、一昨日なので、それまでは開催するつもりで、練習していた)。

 

【重要】愛知県芸術劇場主催事業「中川賢一・野村誠ピアノ・コンサート『愛と知のメシアン!!』(2020年4月12日)」公演延期のお知らせ | 新着情報 | 愛知県芸術劇場

 

劇場の皆さんが、かなり頑張って開催に向けて準備をされていた。コロナウイルス対策で、客席を離して配置したり、出演者とスタッフの体温を検診する、扉は常時オープンで換気をしながら開催するなどなど、考えられ得る限りの手を尽くして、準備していたのだが、ここにきて開催を延期する方向に急転。こちらも、この1ヶ月ほど、このコンサートに向けて、練習をしてきただけに非常に残念ではあるが、練習したことが無駄になるわけではない。1月に向けて、もっと深めて、1月を良いコンサートにしていこうと思う。

 

次に、嬉しいお知らせ。鈴木潤さんとの共著の「音楽の根っこ オーケストラと考えたワークショップハンドブック」(日本センチュリー交響楽団発行)がついに完成し、我が家に届いた。無料配布される冊子で、一般に販売はされない。また、PDF版は近々楽団のホームページからダウンロードできるようになる予定らしい。たった64ページの小冊子に、必要なことを最小限に詰め込んだ。エッセンスが凝縮された本。注をつけたり、図解したり、もっと詳しく説明すれば200ページ以上になる内容。そして、オーケストラと考えた内容ではあるが、オーケストラ関係者やクラシック音楽関係者はもちろん、そうでない音楽家、さらには、音楽以外のジャンルの方々にも読めるような内容になっているので、ぜひ、手にとって読んでいただけたら幸いです。

 

続いて、心配ではあるが、いろいろ勇気づけられた香港からのお知らせ。新型コロナウイルスで心配なのが、千人の入居者がいる香港の巨大福祉施設JCRCだ。副センター長のメーリンと連絡をとってみた。1月から入居者の外出をやめにして、ギャラリーは休業し、入所者や通所者向けのアートのクラスなどのワークショップを全て休みにしているとのこと。とにかく、感染者が出ると、あっという間に広がってしまいかねないので、厳重にやっているらしい。香港は、2003年のSARSの経験があるので、感染拡大を封じ込める対策は、経験がある分、対応が早くできているとのことだった。今は、ヨーロッパ留学の人々が、帰国して、そこから広がる懸念があるので、できるだけ外出を自粛し、イベントの開催を自粛して、これ以上、爆発的に感染が広がらないようにしている段階らしい。施設の入所者たちは、外に出られないなどのストレスがある分、i-dArtのスタッフが、各施設に出向いて、小さなワークショップを開催しているとのことだ。日本のみんなも、しっかり健康で元気でいるようにと言われた。大変な状況であろうと、メーリンのエネルギーに励まされた。

 

こうしてメーリンとやりとりをしたこと、そして、4月12日のコンサートがなくなったことを受けて、ピアノを練習する予定だった時間に、何をするべきか、と考えた。そして、ちょうど2年前の4月から3ヶ月間、ぼくが香港にレジデンスした時のことを、自分なりに文章として整理する作業をしてみようと思った。オーケストラと6年間続けてきたコミュニティプログラムについて、「音楽の根っこ」という本にまとめられたことも影響しているかもしれない。ぼくの個人プロジェクトとして、香港の3ヶ月の記録と意味づけをしてみたい。

 

もう一つ、励まされたのが、ながらの座・座の橋本敏子さんと、里村さんとのネット通話会議。「徹家の音楽会」の開催をどうするかについて、じっくり話すことができた。個人の自主的な企画だから、自分たちで一番やりたいことを納得いくように進めたいという大前提を語り合えた。話しているうちに、安心するし、勇気ややる気も湧いてきた。

 

ということで、いろいろ、状況が日々、変化している。

 

本日のオススメ動画:香港の巨大知的障害者施設JCRCのi-dArtメンバーたちとの昨年6月の即興セッションの数々は、以下の動画の1時間3分あたりから見ると、次々にたたみかけてきます。香港の精鋭たちと、砂連尾理さん、佐久間新さんとのセッション。日本センチュリー交響楽団やたんぽぽの家のメンバー。お時間がある時に、どうぞ。

 

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