野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

未来のピアノのために

調律師という職業の枠を超越した調律師の上野泰永さんご夫妻とランチ。1988年、滋賀県守山市の自宅の側に、スティマーザールというホールを建てて30年。ぼくが出会ったのは、学生時代の91年頃で、92年のpou-fouのレコーディングでは、調律もお願いしていますし、それ以来の付き合いで、ピアノを浮かせて音を良くするスティムフューチャーを開発されたり、ご自身で考案の「未来のピアノ」の特許をとったり、ショパンの時代のプレイエルという博物館にあるようなピアノを購入して、自分で色々いじったり。まぁ、ピアノの探求者なのです。職人としては、博物館にある楽器にも手を加えて、演奏できるように修理したいのだろうと思いますが、博物館にある楽器は史料的価値があるので、修理することよりも、楽器として生き返ることよりも、そのまま保管されることが重要だったりします。しかし、楽器としてみたら、上野さんのように買い取って、それに自分で手を加える。そのことで、ピアノの意味をもう一度考え直す、なんてことになるわけです。まぁ、しかし、こんな調律師、他に見たことがない。

さて、1988年から30年続いたスティマーザールの未来をどうするか。そんな相談もあり。以前やった「ピアノの本音」という催しを、また来年に開催しよう、という相談もあり。また、こうした調律やピアノの考えを本にまとめたりできないか、というもくろみもあり。さらには、「未来のピアノ」を作りたいという思いもあり。この調律一筋の人の野望に、ぼくはどうやって応えることができるのでしょう。少なくとも、よき理解者の一人であることは間違いないのですが。とりあえず、実現可能なことを一つずつやっていくしかありません。