野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

静かな五重奏

香港での巨大な福祉施設JCRCでの「點心組曲」、第2週目に突入。「點心組曲」第4楽章の「MTR Remix」の4回目。前回の録音を再生してみたりする。カヤンがやって来て、また駅名を録音するかと思いきや、今日は、急に歌を歌いだした。まぁ、確かに、こちらの方が普通なのだが。リサがウクレレを弾き始めたり。他の絵を描いている人が歌いだしたり。今日は、駅名は一切録音できなかったが、色々な歌声が録音できた。

「點心組曲」の第5楽章「極めて静かな五重奏 Quite Quiet Quintet」の1回目。ほとんど反応しない5人の人と静かな音の少ない音楽をしようと思っての試み。実際、トーンチャイムなどを鳴らしてみるが、5人は、机にうつぶせになったりして、眠っているか無視しているかのようで、表立った反応をしない。だから、今日は、彼らが一音も出さなくてもいいし、このプロジェクトが2ヶ月で15回ほどセッションする間、一音も出さなくてもいいので、とりあえず、無理にやらせないように最初にお願いしておく。だから、何も変化のない1時間の間、ぼくが静かにトーンチャイムの音を響かせているだけで終わると思っていた。ところが、一人が突如、部屋の片隅にあったCDラジカセのところに行き、ラジオを鳴らし、チューニングを変える。トーンチャイムとラジオの共演。彼は、音楽のつもりなのか、何のつもりなのか、分からないが、音楽的にも面白い展開になって面白い。40分ほど経って、ずっと机に顔を埋めているか、時々起き上がり自分の鼻を叩く人に、鉄琴をすすめてみた。すると、彼は、ばちを持って、かすかに鉄琴をなでるように鳴らした。繊細な音。一人が立ち上がり、部屋の中をうろうろとして後、鉄琴を奏でている人のバチを奪い取り、これまた非常に微かな音でグリッサンドで鉄琴を鳴らす。

2時半ー3時半、職員向けの手作り楽器講座をやって、皆さんに楽器を作ってもらう時間。4時ー5時に、プリスカ(ぼくのいる階の一階下にある施設の施設長)が職員を連れて、次なるプロジェクトの相談に来て、良い打ち合わせ。ベリーニが色々分かってくれているので、間に入って説明してくれるので助かる。その後、ベリーニとの打ち合わせ。6月末に行うことになりそうなイベントの話や、他の地域に出て行く話なんかも含めて、いろいろ。彼女は理解が早いので、短時間でどんどん色々なことをシェアし決めていくことができる。

夜、日本の千住の皆さんと、インターネット電話で打ち合わせ。日本のみんなの声を聞けて、懐かしい。