野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

點心組曲の2週目スタート

香港での5週目の日々。

午前中、久しぶりに時間がとれたので、チェロ協奏曲「ミワモキホアプポグンカマネ」の第2楽章の「アプポ」の編曲作業をし、書き終える(8月28日の北口大輔リサイタルで演奏されます)。

楽器の管理がグチャグチャになっているので、リオと整理。どのキーボードが故障しているのか、どのキーボードが動くのか?どの電源と対応しているのか?そうしたことも、グチャグチャだったので、それらを整理していく。結構、大変な作業だった。こうした整理をしているうちに、トーンチャイムやトライアングルや手作り楽器を発掘。倉庫の中に眠っているものは、全て活用したい。

午後、「點心組曲」の第1楽章「Happy Handsome Rock’n Roll」の6回目。楽譜の浄書ソフトを開いて、再生すると、Fさんは喜んで歌う。メロディーに、簡易なベースと、コードだけ伴奏を入力してみると、Fさんはさらに喜ぶのでアレンジの許可は出たと判断。その後、歌詞の続きをつくり、メロディーを考えてもらう。彼は、作曲が好きなようだ。少し続きができた。

1階のパン屋や売店で明日の朝食を購入後、「點心組曲」第2楽章の「ドラム・カーニバル」の3回目。メンバーは、視覚障害で耳がよく安定したリズム感のバンマスさん。木琴を叩き続けては笑い続けるガハハ・シロフォンさん。手のポーズがカッコいい前後に揺れるダンサーさん。カスタネットの魔術師さん。太鼓で均等なパルスを叩くが途中で他の人にちょっかいを出しに行くチョッカイさん、リズムに反応して鋭い勢いで頭を振り激しいリズムを叩くノリノリさんの6名は、3回続けての参加。そして、本日初参加の人は、タンバリンをいい感じに叩いていた。これに、野村が加わっての8重奏。そして、施設のヘルパーさんも、時々加わるから太鼓9人のアンサンブル。

3回目で慣れてきて、みんなノリがよくなり、楽しさ倍増なのだが、今日は特にノリノリさんが後半で、凄い勢いで、野村の叩いているジェンベを一緒に叩く。もう、それは凄かった。でも、リズムは不均等で、法則性が分からない。ぼくは、バンマスさんのビートをフォローしながらも、ノリノリさんの動きや音を真似て、彼女が何をしようとしているのかを、体感しようとした。それで、分かったのだ。彼女は、リズムを感じると同時に。太鼓の表面に書かれた文字が太鼓の振動によって歪むのを楽しんでいるのだ。彼女は、太鼓でどんな音を出すかではなく、文字がどんな風に歪むかを追求して叩いている。つまりは、太鼓の皮がどんなに振動で変形するかを楽しんでいるのだ。なるほどなーー。私物だったら、次回、この太鼓の表面に絵を描いてみたい。ノリノリさんに、何度も投げキスをもらってから、次のセッションへ。

「點心組曲」第3楽章の「車椅子四重奏」の3回目。前回の鍵ハモさんに、今日は、ウインドチャイムとQコード(鈴木楽器の電子楽器)を試してみる。手の稼働域が広くはないので、うまく音が出るケースがそんなには起こらないのですが、音が出るときはドラマです。続いて、木琴さん。今日も楽しく演奏しては、バチを放り投げる。バチを放り投げた後の笑い声が非常に魅力的で、彼女の声に興味を持ちました。続いて、ウクレレさんには、メーリンの私物であるハープをやってもらう。この方は、もの凄く持続力があるので、15分間、延々とグリッサンドをやり続けました。大したものです。ぼくも共演。ある種のミニマルな音楽で、非常に響きが心地よい。永遠に続くのかと思ったら、15分経ったら、突然演奏をやめて、ぼくの両手首を持って、ぼくに拍手をさせました。ヘルパーさんによると、ぼくのことを気に入ってくれた印のようです。最後は太鼓さん。非常にパワフルに叩くのですが、こんなに嬉々とした表情で楽器を演奏されると、ぼくは、ここまで音楽をすることに喜びを感じているだろうか、と問いただされる気がします。素晴らしい喜びの気持ちです。

少し休んで後、「點心組曲」の第13楽章の「5 Lectures on Sound」の1回目。今日はアルミフォイルで遊び、その後、イスや机や身の回りの物で遊んだ後、リズムにのせて絵を描いてもらい、最後に、それぞれの絵を見ながら、野村が即興演奏をする、というプログラムで行いました。アルミフォイルで予想外の楽器が生まれたりしました。次回が楽しみです。