野村誠の作曲日記

作曲家の日記です。ちなみに、野村誠のホームページは、こちらhttp://www.makotonomura.net/

朝、昼、夕の3つの大セッション

香港での7週目が始まる。午前中、プリスカが施設長をするセンターへ。プリスカの発案で、キッチン用品楽団をやりたいと言う。行くと、鍋が少しと、バケツが少しある。もっと要るんだけど、と言うと、キッチンから集めてきてくれる。しかし、マレットがいいのがない。仕方なく、i-dArtから持ってくる。それで、鍋とかフライパンとかを叩きながら、それに合うマレットを選んで、利用者さんたちに渡していく。で、様子を見て、楽器とマレットをチェンジしていく。そこにいる人が力が強い人だったら、低音が出そうなバケツと柔らかめのマレットを渡すが、力が弱い人だったら、金属の鍋と硬めのマレットを渡したりする。ピッチの違うフライパンを二人の人が、微妙に違うテンポで叩くことで、できるリズム。民族音楽でありミニマルミュージックでもある。この二人の楽器、決定!ということで、どの楽器(キッチン用品)を誰がやるか、を選ぶのが今日の仕事。いい感じのセッション。「點心組曲」の第16楽章の「キッチン・ミュージック」

ランチの後、中国太鼓の担当の人と会って、「ドラムカーニバル」用に、中国太鼓を一台借りられることになった。嬉しい。

「點心組曲」第11楽章の「Afro-Brazilian Cantonese Dancing Ensemble」の3回目。30人の大アンサンブルなのだけど、今日は、ここで最低一人は、突出したメンバーを覚えようと思って、始める。太鼓を渡されている人にピンとくる人がいなかったのだが、すずを渡されている人の一人が、非常に正確に複雑なリズムをやっている。そこで、彼女に、ジェンベを渡してやってもらうことにした。すると、いいリズム感であることが、より明確に。この太鼓を床から浮かして持つのに苦労しているのが、見て取れた。床に置いてしまうと、音が変わってしまうことが分かっているのだ。そこで、カホンを叩いている職員さんと楽器を代わってもらって、カホンをやってもらう。カホンでも、いい切れ味のリズムを出すし、アンサンブルの全体を引っ張っていくビート感。この人、このチームの中核になる人だ、と直感。ノリノリのビートに飛び跳ねる人も。

その後、ピアノソファ君が好きというアイドルグループの曲の譜面を用意し、それをピアノで弾いてみた。すると、ピアノソファー君は、別に寄って来ないで(多分、遠くでこっそり聞いている)、さっきのカホンさんが歌いだす。彼女にマイクを向けると、歌いながら太鼓を叩く。叩き語り!素晴らしい。カラオケタイムをしばらくして後、ピアノソファ君のレパートリーであるピアノ曲を弾くと、ピアノソファ君がやって来て、ピアノを弾き始める。今日も、みんなの前で弾いて、今日は演奏後にみんなの拍手を浴びた。恥ずかしそうに照れるピアノソファ君。

こうした中間部を経て、最後に、また太鼓大セッション+野村のピアノ。これが、非常にノリノリのダンスミュージックになり、みんなが踊り狂う。今日は、3回目にして初めて日本語で歌わなかった。でも、3回の中で、一番いい感じの回になった。

夕方は、第13楽章の3回目。これは、ディックが教えているアートコースのクラス。今日の前半は、ディックが自分も使い方が分かっていないアナログベースシンセサイザーVolca Bassを持参し、みんなに演奏させる。もう一台は、i-padの鍵盤を演奏させる。エレクトロ音楽の混沌としたデュオが、色々な組み合わせで行われる。それぞれの個性が出て面白い。何せ、指一本でタッチすれば、いろいろ音が出るし、つまみを回すだけで音が変化するので、みんな力任せではなく、楽しんでいる。それで、後半は、楽器をかえてアコースティックデュオに。ハープとウクレレを用意。これまた、指で弦を触れば、とりあえず、音はでる。色々な奏法も出た。最後の方で、ハープを箸で力強く演奏する人が出たので、ぼくが水の巨大ボトルの演奏で共演すると、だんだんディックもi-padでフリー即興に加わり、場が混沌とし始め、ぼくもボイスで様々な奇声を織り交ぜながら即興。ディックもみんなをあおり、マイクをまわして、それぞれが喋ったり、何か声を出したりするなか、ぼくはボトルを叩いてグルーヴ担当。ますます、狂乱の宴になり、みんなが色々な居方でそこにいるのが、心地よい。その後、最後に、ディックがフリーセッションだと言うので、ぼくもキーボードを持ち込み、セッションに加わる。ああ、これはアートコースというよりは、フリーインプロのセッションに来た感じ。良い時間でした。